欧州サッカー界が1つの転機を迎えている。
長らく頂点に君臨したメッシとC・ロナウドに代わり、ペドリやハーランドといった2000年代生まれの若者たちが、新時代を創らんとばかりに輝きを放っている。
今回は、とりわけ個性が際立つ”10人の風雲児”を紹介する。
ペドリ(MF/バルセロナ/スペイン代表)

| (生年月日) | 2002.11.25 |
| (身長・体重) | 174㎝・60kg |
| (21-22シーズン公式戦成績) | 22試合・5得点 |
ラスト30メートルで違いを作り出すクオリティー
・天才イニエスタに例えられるスペインのミレニアム世代随一の逸材
・繊細なボールタッチを活かして相手のプレッシャーをかわす技術、正確な長短のパスワークに加えて、ドリブルでの持ち上がりやそこからの仕掛け、アシストなど中盤だけでなくラスト30Mでも違いを作り出すクオリティーを持つ。
・優れたフィジカルを持ち、ピッチの状況を的確に把握しゴールから逆算して、しかも相手より1足早いタイミングで局面を前に進めるプレーを選択できる戦術的インテリジェンスの持ち主。
・守備の局面では、プレーの流れを読んでパスコースに入りインターセプトする戦術眼に優れるだけでなく、攻撃➡守備の切り替えにおけるカウンタープレスも的確。

・バルセロナ、スペイン代表、マンチェスター・Cのように、ポゼッションによるゲーム支配と即時奪還を基盤とする戦術を採用しているチームにおいて、かつてのイニエスタに匹敵する存在に成り得るだけのポテンシャルを備えていることは間違いない。
・21/22シーズンは、筋肉系の故障を繰り返し大半を棒に振ったが、肉体改造をして臨む今シーズンは、パフォーマンスの安定性、ラスト30mでの貢献度という点でさらなる成長が期待できる。
過度な発言はせず、何をすべきか明確に理解
・過度な発言とは無縁で、SNS愛好家でもない。自分がいま何をすべきかを理解し、ピッチ上でアピールを続けている。加えて若者にありがちな無責任な発言もなく、昨年10月に契約を更新。すでにバルサの中心選手であることを自覚し、居残りでシュート練習したり、ジムでトレーニングしたり、他の選手のお手本になっている。

・ペドリがバルサに加入した時は、CLでバイエルンに2-8で歴史的大敗を喫した直後で、メッシの去就問題が勃発するなどクラブが混迷を極める中、クーマン監督の信頼を勝ち取り、定位置を確保した。これもひとえに、知性、感情のコントロールに優れているからにほかならない。
・チームが困難な状況にあっても臆せずボールを要求して自らチームを引っ張ろうとする責任感とリーダーシップも、19歳とは思えないレベル。
・目指すは、バルセロナのリーダーであり、世界のトッププレイヤー。ペドリは着実に歩みを進めている。
ドゥシャン・ヴラホビッチ (FW/ユベントス/セルビア代表)

| (生年月日) | 2000.1.28 |
| (身長・体重) | 190cm・75kg |
| (21/22シーズン公式戦成績) | 48試合・29得点 |
絶対的なクオリティーではハーランドに続く存在
・21/22シーズンは、フィオレンティーナで22試合17得点・2アシストと大ブレイクし、冬のメルカートでユベントスに引き抜かれた。純粋なCFとしては、ハーランドに続いて同世代のトップを走るタレントだ。
・DFを背負ってのポストプレー、裏のスペースをアタックする動き、ペナルティーエリア内でのフィニッシュワークはもちろん、オープンスペースでのカウンターアタックまで、CFに求められる全てのプレーを高いレベルでこなすモダンなスタイルを持っている。
:focal(1263x214:1265x212)/origin-imgresizer.eurosport.com/2022/04/09/3352681-68533888-2560-1440.jpg)
・絶対的なクオリティーという点では、スピード、クイックネス、シュートの精度をはじめとするテクニックにおいて、ハーランドにはやや及ばないが、それでもワールドクラスのCFに成長するだけのポテンシャルを秘めている。
・ユベントスは今シーズン、彼を中核に据えてチームを構成する方針を示している。そこでどれだけ期待に応えるパフォーマンスを見せられるか。そが今後のさらなる成長に向けた試金石になるだろう。
世界トップレベルを目指して、全てを捧げる野心
・パルチザンのトップチームにデビューした16歳の頃から、自らのクオリティーと可能性に強い自信を持っており、世界トップレベルのストライカーになるために全てを捧げている野心家だ。
・17歳でフィオレンティーナとの契約にサインし、移籍が可能になる18歳までの1年間、公式戦から遠ざかることを受け入れたのは、それが最善の道だと確信していたから。アーセナルではなくユベントス行きにこだわったのも、戦いなれたセリエA の頂点に立つのが次のステップだという、揺るぎない信念に基づく選択だった。

・プレッシャー耐性も十分で、フィオレンティーナとの契約延長を拒否してマスコミやファンから非難されたとき、「ピッチ外のことは家族と代理人に任せている。僕はピッチでベストを尽くすだけ」と、トレーニングに集中。
・私生活はストイックそのもで、自宅と練習場の往復で成り立っており、プライベートでのスキャンダルは全くない。家族・友人との時間を大切にしており、それをSNSで公表することもない。
・よく比較されるハーランドについては「スピードは少し劣るが、それ以外は互角」と自信満々に答えている。
ジャマル・ムシアラ (FW/バイエルン/ドイツ代表)

| (生年月日) | 2003.2.26 |
| (身長・体重) | 183㎝・70kg |
| (21/22シーズン公式戦成績) | 39試合・8得点 |
卓越したドリブルで、数的不利を物ともしない
・17歳にしてバイエルンでプレーし、早熟の天才児と騒がれてから2年。その後も着実に出場機会を増やし、経験値を積み上げてきた。トップ下はもちろん、ウイング、インサイドハーフ、セントラルMF、さらにCFと中盤と前線のあらゆるポジションをこなせる万能性を備えたアタッカーだ。
・巧みなボール捌きと、華麗な身のこなしで相手プレッシャーをかわすドリブルは卓越しており、1対1はもちろん、数的不利な状況でも簡単に密集を突破して、1人で局面を打開してしまう。

・素早くフリーの味方を見つけて送り出すショートパスやミドルパスの精度は極めて高い。ただし、コンタクトを避けようとするあまり、必ずしも効果的といえないプレーを選択して局面を停滞させる場面も散見される。
・守備では、相手を待ち受ける1対1では当たり負けしがちだが、素早い切り替えから前に出てのプレッシングは強度、タイミングいずれも的確。バイエルンのように、格下相手に押し込む展開が多いチームではセントラルMFの一角も務められるが、本来のポジションは2ライン(DFとMFの間)間を主戦場とする1.5列目だろう。
・同学年のベイリンガム、ヴィルツに比べると、まだプレイヤーとしてのアイデンティティーは固まっていないが、その分、伸びしろがあると言える。テクニカル面では申し分ないが、フィジカル面ではパワーとスピードに欠ける。
まだ10代ではあるが、、プロらしい姿勢を
・バイエルンでデビューしてから2年が経つが、まだ「恐ろしくサッカーが上手な少年」という印象は変わっていない。いつも年長者たちの陰に隠れているイメージだ。本人が意図しているのか、無意識なのかは定かではないが、プロのフットボーラーとして、もう少し自己主張が必要だ。
・ブンデスリーガやCLで証明してきた素晴らしい才能を考えても、もっと堂々と振る舞ってもいい。バイエルンに集う世界的スターに委縮していては、いつまでもパーソナリティーを磨くことができない。
・ニックネームの”バンビ”(小鹿)にしても、シャイな性格が由来と聞く。18歳にしてリーダーの風格を漂わすドルトムントのベイリンガムとは正反対の愛称だ。
・今すぐにでも意識改革を行わないと、現在の早熟なメンタリティーでは、次第に豊かな才能を持て余し、同世代の選手に追いつかれかねない。
フィル・フォーデン (MF/マンチェスター・C/イングランド代表)

| (生年月日) | 2000.5.28 |
| (身長・体重) | 171cm・64kg |
| (21/22シーズン公式戦成績) | 44試合・14得点 |
21歳時点の到達点は、メッシのそれに匹敵する
・今回取り上げるの10人の中で、ポテンシャル、現在時点の到達時点ともにトップを走る。
・171cmと小柄だが切れ味鋭いクイックネスとアジリティーを備え、左利きながら右足も自在に使いこなす高度なテクニックを武器に、サイドから中央までラスト30mのあらゆるゾーンで違いを作り出す。1対1の突破力にも優れているが、コンビネーションやラストパス、3人目としてのオフ・ボールの動きなど、周囲との連携で局面を打開する能力の高さが最大の武器。

・デビュー当初は目の前の敵をかわすだけで満足する傾向があったが、経験を重ねるにつれてゴールやアシストから逆算して最も効果の大きいプレーを選択する戦術的インテリジェンスが向上、決定的な仕事に絡む頻度が高まった。
・世界最高峰を争う現在のマン・Cで、他のアタッカー陣を差し置いてデ・ブルイネ、B・シウバという絶対的な主力と肩を並べる存在に成りつつあり、課題だったパフォーマンスの安定性も着実に向上している。彼ら2人と同様、ピッチにいない時にその不在を強く感じさせるキーマンの1人だ。
・21歳における到達時点は、メッシに匹敵し、C・ロナウドを上回るといってよいだろう。ここから彼らの領域に到達できるかは、今後の成長次第。フィニッシュ面でもさらに向上し、シーズン25得点をコンスタントに記録できれば、名実ともに、2000年代のメッシ&C・ロナウドの後継者の地位を確立できるだろう。
成熟が必要だが、問題があるわけではない
・フォーデンが生まれ育ったマンチェスター郊外のストックポートは少しラフな地域であり、そんな出自が影響しているのか、粗暴な一面を見せる時がある。
・もっとも、元来はシャイな性格で、インタビューは苦手なタイプ。家族との時間を大切にしている。
・ただ一方で、近年はネガティブなニュースで紙面を賑わせてもいる。20年9月にはグリーンウッドと共にイングランド代表の遠征先のホテルに女性を連れ込み、追放処分(2か月)を受け、21年12月にはグリーリッシュとナイトクラブに繰り出し、ペップの逆鱗に触れた。

・ただ2つの事件は、極度のストレスと重圧から解放されたいがために起きてしまったことと解釈される。普段は静かな生活を送っていて、息子と娘もいる。今以上に成熟する必要はあるが、メンタルに大きな問題があるわけでない。
アルフォンソ・デイビス (DF/バイエルン/カナダ代表)

| (生年月日) | 2000.11.2 |
| (身長・体重) | 183cm・75kg |
| (21/22シーズン公式戦成績) | 30試合・0得点 |
攻撃性能は申し分なし、守備に改善の余地
・攻撃的サイドバックとしては、すでに世界のトップを争う実力者。
・前方のスペースにボールを出すと、最初の1,2歩でマーカーを抜き去り、そこからの加速で置き去りにする圧倒的なスピード、自陣でのボール奪取から一気に敵陣深くまで運び、展開をひっくり返す突破力は他に類を見ないレベル。チームが相手を押し込んでいる際は、サイドからのドリブル突破やクロスでチャンスメークの一翼を担うなど、攻撃性能は申し分ない。
・一方で、ネガティブ・トランジション(攻撃➡守備の切り替え)、そして守備の局面においてポジショニングや状況判断、1対1の対応に大きな改善の余地を残す。言い換えれば、この点が文字通りの伸びしろ。現時点で、持ち前の脚力とフィジカルで、守備の戦術的なミスを補っているが部分が少なくない。そこを改善できれば、サイドバックとしての総合的なパフォーマンスレベルをさらに高められるだろう。

・DFのバロンドール受賞者が少ないことからして、CLやW杯で決定的なゴールをいくつも決めるような、特別な活躍を見せない限り、表彰台に名を連ねるのは難しいだろう。
やや楽観的な性格がピッチで仇となることも
・リーダーの役回りは性分に合わず、常にリラックスしていてハッピーに過ごしている印象だ。
・ただ時として、細かい約束事が多い守備の局面で困難に陥りがちで、プレーインテリジェンスを高める努力が必要だ。

・対照的に抜群なのが、コミュニケーション能力だ。若者らしくSNSを活用し、ファンや他の分野のコミュニティーと積極的に交流している。人懐っこく開放的な性格が、サッカー界の様々なシチュエーションを乗り越える助けになるはずだ。
<<<その他の関連記事>>>

コメント