欧州サッカー界が1つの転機を迎えている。
長らく頂点に君臨したメッシとC・ロナウドに代わり、ペドリやハーランドといった2000年代生まれの若者たちが、新時代を創らんとばかりに輝きを放っている。
今回は、とりわけ個性が際立つ”10人の風雲児”を紹介する。
アーリング・ハーランド (FW /マンチェスター・C/ノルウェー代表)
| (生年月日) | 2000.7.21 |
| (身長・体重) | 194cm・88kg |
| (21/22シーズン公式戦成績) | 29試合・28得点 |
爆発的なスピードと強烈な左足に加え”嗅覚”も
・今夏にマンチェスター・Cに入団した世代きってのビックタレント。絶対的なクオリティーという点では、フォーデンと並んで取り上げる10人の中でも飛び抜けた存在。
・レッドブル・ザルツブルグで衝撃的なデビューを飾り、そこからステップアップしたドルトムントでもブンデス・リーガ、CLといずれの舞台でも1試合・1得点に近いペースでゴールを量産してきた。
・190cmを超える強靭な体格、爆発的なスピードと強力かつ高精度な左足のシュートに加え、ペナルティーエリア内での、”嗅覚”にも優れた生粋のCFだ。得点場面は、こぼれ球を流し込んむ泥臭いシュートよりむしろ、ゴール前の狭いスペースでフリーになって叩き込むシュートが多いのが特徴。これはプレーの展開や周囲の動きを読みながら的確なタイミングでマークを外し、自身のためにスペースに走り出す術に優れているからだ。

・フィニッシュだけでなく、前線で基準点として機能し、ポストプレーや裏のスペースアタックで攻撃に幅をもたらす仕事も、周囲と連携しながらチームのメカニズムの中でしっかりこなせる。デビュー以来、期待通りの成長曲線を描いており、すでにドルトムントは彼にとって「きつすぎるシャツ」になっていた。
・今夏に移籍したマンCで障害にぶつかるとすれば、純粋なCFとしてプレーしてきたこれまでのキャリアとは異なる仕事を求められる時か。いわゆる9番タイプを置かないスタイルがベースになっているのが昨シーズンのマンCであり、グアルディオラ監督が求めるであろう役割は、ハーランドが担ってきたそれとは異なる可能性がある。
ピッチ内外で感情を完全にはコントロールできていない
・ゴールに強くこだわる貪欲さと、溢れんばかりの野心を示したエピソードがある。昨シーズンのヘルタ・ベルリン戦(8節)、4ゴールを奪ったその試合の85分に途中交代を命じられると、「まだ物足りない」とばかりに不満を爆発させた。いい意味でのエゴを持ち、加えて劣勢に立たされた状況でも諦めずに前を向ける反発心も備えており、実際に苦しい局面で重要なゴールを何度も決めてきた。
・気になったのは、マン・Cへの移籍が発表される前の言動だ。マン・Cとの交渉の進捗が気がかりだったのだろうか、どこか神経質で、つねにイライラを募らせ、まだドルトムントの一員であるにも関わらず、心ここにあらずという様子だった。
・ピッチ内外において感情をまだ完全にコントロールできておらず、自分よりつねにチームを優先する献身性や忠誠心、ディシプリンの部分においても疑問符が付く。今後トップを目指すうえで磨かなければならない部分だろう。

・ただその素顔は、クラブの裏方的なスタッフへのリスペクトを忘れないナイスガイで、コミュニケーション能力も高く、年齢の割には人間として成熟している。自身の技術的な弱点(右足とヘディング)も把握しており、それを改善する努力を怠らない21歳のキャリアは希望に満ちている。
ヴィ二シウス・ジュニオール (FW/レアル・マドリー/ブラジル代表)

| (生年月日) | 2000.7.12 |
| (身長・体重) | 176cm・73kg |
| 21/22シーズン公式戦成績 | 50試合・21得点 |
一旦スペースに持ち出せば、あらゆるDFをぶっちぎる
・モダンサッカーにおいてはCF以上に重要かつ注目される1対1の突破力と得点力を併せ持つウイングとして、ミレニアム世代の先頭を走るブラジル人アタッカーは、18歳でフラメンゴからマドリーに引き抜かれて4年目、段階的なプロセスを経て着実な成長を遂げてきた。特に、昨シーズンは、新任のアンテェロッティ監督から大きな信頼を得てコンスタントな出場機会を手に入れ、格上のライバルであるアザールをベンチに追いやって絶対的な主力としての地位を手に入れた。
・最大の武器は爆発的なスピードとトリッキーなテクニックを駆使した1対1突破。一旦オープンスペースにに持ち出せばあらゆるDFをぶっちぎり、狭いスペースで複数に囲まれてもそこから抜け出すボールスキルとクイックネスを備えている。

・以前は目の前の敵を抜き去るだけで満足し、決定機に繋がるプレーが少ないという欠点を抱えていたが、それも経験と学習によって克服。21/22シーズンはラ・リーガだけで17得点・10アシストとフィニッシュに絡む頻度が大きく高まっている。
・フィジカルやテクニックの側面が進歩したわけでなく、プレースタイルも基本的に単独突破が基本だが、それを試合の中でより効果的に発揮し決定的な仕事に直結させる戦術的インテリジェンスが磨かれたということだ。守備の局面での貢献に関しては大きな改善の余地を残しているが、それも含めた総合的なポテンシャルはフォーデン、ハーランドに迫るレベルにあり、近未来のバロンドールに手が届く存在と言える。ただ、そのためにはゴールに近い所で決定的な仕事をする頻度を、さらに高める必要がある。
自主的に居残り練習を続け、自宅ではパーソナルコーチと
・18歳で名門マドリーに入団したヴィニシウスが直面したのは、異国の文化、サッカーに適応する難しさに加え、周囲の心無い批判やネガティブな反応だ。イージーゴールを外すとその決定力の低さは、ときに嘲笑の対象になった。
・判断力が整わず、ドリブル突破という武器を効果的に使えなかった入団当初は、レンタルを勧める声もクラブ内部に多かった。
・ただ、それだけ叩かれても、どれほど武者修行をを勧められても、マドリーを離れる考えは微塵もなかった。そして、自身の可能性を信じて一心不乱に練習に打ち込み、今シーズンの飛躍に繋げて見せたのだ。大きな野心や負けん気の強さがなければできない芸当であり、そうしたメンタルの強靭さは、ミスを犯した後もボールを要求し続け、攻撃を牽引しようとする姿勢にも表れている。

・いまや天与の才能やセンスだけでは継続的に活躍できない時代。サッカーを第一に考え、努力を続けられるかが成否をわける分けるポイントにもなってくる。そもそもマドリードは誘惑の多い街である。そんな環境下でもヴィニシウスはサッカー中心の生活を続け、自主的に居残り練習をし、自宅では、パーソナルトレイナーとトレーニングに励んでいる。決定力が向上したのは地道な努力の賜物であり、ディシプリンの高さがその根底にある。
フロリアン・ヴィルツ (MF/レバークーゼン/ドイツ代表)

| (生年月日) | 2003.5.3 |
| (身長・体重) | 176cm・70kg |
| (21/22シーズン公式戦成績) | 31試合・10得点 |
的確なプレーを選択するインテリジェンスが武器
・左右両足のテクニックと攻撃センスに富んだドイツ期待の攻撃的MFで、つねに的確にプレーを選択する戦術的インテリジェンスが武器。プレーエリアが重なる同世代のタレントと比較すれば、たとえば1対1の突破を図る際などに、その「次」の展開まで見通せるビジョンが傑出している。
・176cmと小柄な選手のイメージに違わず、パワーやスピード以上にテクニックとアジリティーに優れる。単独で状況を打開するより、周囲との連携しながら強みを活かそうとするタイプだ。その特徴的にはベイリンガムとフォーデンの中間といった感じだが、絶対的なクオリティー、とりわけフィジカル面(体格、スピード)はふたりに比べてワンランク落ちる。

・持ち味を発揮しやすいのは、オープンスペースより密度の高い2ライン(DFとMF)間。その特徴を踏まえれば、個人能力への依存度が高いR・マドリーやパリSGではなく、マン・Cやバルセロナのようにコレクティブかつテクニカルなチームの方に適用しやすいだろう。ドイツの若手の逸材がステップアップ先に選びがちなバイエルンでも、たとえば2枚のトップ下の一角、あるいは攻撃的なインサイドハーフとして機能しうる。
・今年の3月に前十字靭帯損傷の大ケガをしたため、当面の課題は復帰、そして本来のパフォーマンスを取り戻すこと。そのうえでメガクラブにステップアップできれば、その新天地で「天下人」の器かどうか問われることになるだろう。
普段は控えめで礼儀正しい。もっとリーダーシップを
・プロデビュー前の2020年1月、7歳の時から過ごしたケルンに別れを告げ、近郊のレバークーゼンに移籍。その瞬間だけでなく中期的な視点に立っても、あらゆるケルン・ファンを敵に回す背信行為で、それを承知の上で決断を下したのだから、彼は平坦な道を歩むタイプではない。
・知性や娯楽性に富んだプレーを見せ、ピッチ上では雄弁だが、普段は控えめで礼儀正しい。目立ちたがりではなく、実はドイツのでの知名度はまだまだ低い。それゆえに残念なのは前十字靭帯損傷による離脱。この重傷により、カタールW杯のメンバーに選出され、スポットを浴びる可能性が小さくなっている。

・知名度云々はさておき、若くしてレバークーゼンの主軸を担うポテンシャルに疑いの余地はない。ケガが癒え、元のフォームを取り戻せた暁には、もう少し自分自身をアピールしてもいいのではないか。ピッチ上でもっとリーダーシップを取り、チームを引っ張る姿を見せつけるべきだ。
・その点に消極的なままでは、なにかとアピールが上手な若手に取って代わられるかもしれない。もっとも、ヴィルツ級の才能を秘めたドイツの逸材はムシアラ以外に見当たらないが。
ジュード・ベリンガム (MF/ドルトムント/イングランド代表)

| (生年月日) | 2003.6.29 |
| (身長・体重) | 186cm・75kg |
| (21/22シーズン公式戦成績) | 43試合・6得点 |
安定性と継続性を高めれば、デ・ブルイネの域に到達も
・恵まれた体格に高いフィジカル能力と際立ったテクニックを持ち、プレーの質・量ともにチームに大きな貢献を果たせるタレント。このまま順調に成長すれば、デ・ブルイネに匹敵するワールドクラスの万能型MFになれるポテンシャルを秘めている。そのデ・ブルイネと比較するとラスト30mでの崩し、とりわけフィニッシュに関与する度合いは低いが、その分、中盤でボールに関わる頻度が高く、攻守の両局面での貢献度は大きい。

・ボールコントロールや長短のパスワーク、ドリブル突破と前線への持ち上がり、さらにはアシスト能力、パフォーマンスの安定度も兼備。まだ19歳にもなっていないことを考えれば、MFとして完成度は驚くべきレベル。18歳時点のデ・ブルイネと比較しても明らかに上で、その早熟度はむしろポグバに例えられるかもしれない。個としての絶対的なクオリティーが高く、戦術的な柔軟性も備えているので、どんなタイプのチームにもすぐに適応できる万能性が魅力。
・ドルトムントでの活躍ぶりは申し分ないが、欧州の頂点を争うクラブでは、高いレベルのパフォーマンスを安定的かつ継続的に発揮しなければならない。今後の4~5年でその点をクリアし、さらなら成長を遂げれば、ポグバを超えてデ・ブルイネの域に到達することも不可能でない。
強いパーソナリティーと高い献身性を持つ
・20年夏にバーミンガム(イングランド2部)から17歳の若さでドルトムントにやってきたベリンガムは、加入当初からパーソナリティーの強さと、チームへの高い献身性を発揮。年上のチームメイトたちにも物怖じせずにボールを要求する姿が印象的。サッカーに取り組む姿勢や情熱は、現所属選手たちの中でも異彩を放っている。
・ピッチ外でも、チームメイトやスタッフと積極的にコミュニケーションを取り、常に明るく、メンタルの浮き沈みもほとんど見られない。そのため、オープンマインドを重要視するドルトムント風土にもすんなりとフィットするができている。あえて課題を挙げるならば、熱さが空回りして、余計なカードをもらいがちな点。感情のコントロールが今後の成長のポイントのひとつ。
ガビ (MF/バルセロナ/スペイン代表)

| (生年月日) | 2004.8.5 |
| (身長・体重) | 173cm・68kg |
| (21/22シーズン公式戦成績) | 44試合・2得点 |
デビュー当時のシャビに例えられるセンスの持ち主
・17歳でバルセロナのトップチームに抜擢され、しかもレギュラーの一角を占めてきたというだけで、大きな注目を浴びるのも当然と言える。
・常に周囲の状況をスキャンし、すっとマークを外して中間的な位置を取りつつ次のプレーを意識した身体の向きを整えるポジショニング、2タッチのボール捌きでシンプルかつ効果的にボールを動かすパスワークから、素早い攻守の切り替えでタイミング良く間合いを詰めるプレッシャーまで、デビュー当時のシャビに例えられるのも納得できるパフォーマンスを見せている。
・ただし、絶対的なクオリティーという点からすると、フィジカル能力、、テクニックともに抜きんでた何かを持っているわけでなく、バルセロナというチームとその戦術の中で非常に効率的に機能している一方で、異なるチーム、異なる戦術においては、違いを作り出せる卓越性を備えて居ないように思える。
・173cmと小柄な体格で、アジリティーと持久力は高いもののスピードやフィジカルコンタクトは平均的なレベルに留まるため、常にコンパクトに戦うバルセロナのようなチームでなく、攻守ともに広いスペースをカバーすることも求めるチームでは持ち味を発揮しにくいだろう。
プレッシャー耐性は完璧 感情のコントロールが課題
・ガビは夢中になってプレイする。CLデビュー戦となった昨年9月のバイエルン戦でも、百戦錬磨の相手にひるむこともなく激しく当たりに行き、負けん気の強さを示した。
・トップチームに昇格してから目につくのがインテリジェンスの高さで、局面に応じて効果的にプレーを選択することを優先し、無謀なことは一切しない。

・13枚のイエローカードを提示されているように、感情のコントロールが今の課題。その一方で、プレッシャー耐性、逆境への反発心は十分に備えている。また原点を忘れず、いまなおラ・マシア(選手寮)に住み、時間が許す限り、かつてのチームメイドが出場するBチームの試合を観戦するなど、ガビは地に足を付けながら成長を続けている。
<<<関連記事はこちら>>>

コメント