カタールW杯に出場する全32チームを紹介。
今回は、FIFAランキング1位に君臨し、W杯南米予選を無敗の1位通過で本大会出場を決め、20年ぶりの栄光に向け完成の域にある、南アメリカ代表のグループG・「ブラジル代表(セレソン)」。
基本情報
出場回数 | 22回(22大会連続) |
最高成績 | 優勝(5回) |
FIFAランキング | 1位 |
首都 | ブラジリア |
人口 | 2億947万人 |
監督 | チッチ |
愛称 | セレソン(代表) |
<直近6試合の成績>
3/25 | W杯予選 | チリ | 〇 | 4-0 | H |
3/30 | W杯予選 | ボリビア | 〇 | 0-4 | A |
6/2 | 親善試合 | 韓国 | 〇 | 1-5 | A |
6/6 | キリンカップ | 日本 | 〇 | 0-1 | A |
9/24 | 親善試合 | ガーナ | 〇 | 3-0 | H |
9/28 | 親善試合 | チュニジア | 〇 | 5-1 | H |
・チッチ監督は16年半ばの代表監督就任以降、実に様々な戦術を試し、特に今回のW杯南米予選の後半においては、セレソンをよりクリエイティブにするために代替案を求めて、試合ごとにチームに変化を加えてきた。そしてついに予選終盤では、チッチ自身が「想像力があり、かつ効果的な攻撃が理想の形に近づいてきた」と語るに至り、本大会までに完成度を高めてきている。
・ブラジルは世界で唯一のW杯全大会出場し、最多の5度の優勝を達成している国だが、02年大会を最後に4大会でタイトルを逃している。プレッシャーは増す一方だが、6節を残して予選突破など明るいニュースが多い。
・18年大会からプレーする経験豊かな選手に加え、FW を中心に続々と才能豊かな若手が現れてポジション争いを激化させている今、20年ぶりの栄光に向け、国民の期待も増している。
監督
(名前) | チッチ |
(生年月日) | 1961.5.25(61) |
(国籍) | ブラジル |
(就任) | 2016.6月 |
・南米予選6節を残して突破を決めるなど、数々の快挙を成し遂げながらの2度目の挑戦。
・攻守のバランスと切り替えの速さを重視するサッカーは完成の域にあり、とりわけ守備の強度は世界屈指。
・研究熱心で詳細にこだわる厳しい指導の一方、選手・スタッフ・メディアを含めた人心掌握に長け、全員が一丸となって戦う雰囲気を作り出す。
・好調な選手が多いことが悩みの種で、アリソンとエデルソンの正GK争い、人材豊富な攻撃陣。それ以外にも、M・クーニャ、フィルミーノ、リシャ―リソンらのCF、サイドではG・ジェズスが好調なほか、ロドリゴ、マルティネッリの成長も著しい。
基本フォーメーション&戦術
”完璧”に近い世界最高のチームで 20年ぶりの世界1を目指す
<基本フォーメーション>

<攻撃編>

・南米予選終盤から採用しているのが、【4-2-3-1】を基本にし、変幻自在にプレーする戦術だ。ポイントとして、以前は左サイド寄りでプレーしていたネイマールが”偽9番”となる試合が増えた。センターでスタートし、自由に動きながら攻撃をサポートする。、より10番らしい役割となっている。
・後方では7人(GK、DF4人、MF2人)が個々の技術力を生かして攻撃の起点となり、短いパスで繋ぐ。右SBダニーロはCB的にプレーし、左SBのA・サンドロが前方中央寄り、ボランチのカゼミーロとフレッジの近くでプレーし、攻撃の組み立てに参加する。前方ではスピードのある2人のFW(左にビニシウス、右にラフィーニャ、アントニー)がサイドに広がり、L・パケタとネイマールは技術力を生かして中央から攻撃する。
・チッチの主な目的の一つは、二人のドリブラーにサイドで自由に動けるスペースを与え、ボールを受けたらすぐに攻撃を仕掛けられるようにすること。もう一つは、フレッジとA・サンドロが中盤にいることで、ネイマールとL・パケタがボールをもらいに下がる必要がなくなり、チャンスメイクの機会が増え、ゴールに近づきやすくなることだ。
・二人のドリブラ―が、ペナルティーエリアに飛び込むために中に入る場面も多い。また、二人が前に出ている時はL・パケタのパスの選択肢を増やすために、SB、ボランチ、CBまでもが前に出るケースもある。
<守備編>

・高い位置で守備をするため、まずは二人のFWが前に出て、【4-2-3-1】のプレッシャーをかける。可能な限り、前線から中盤にかけたエリアでボールを奪い返す。
・中盤での守備を厚くするために【4-2-3-1】になるか、相手の攻撃の深さによって、ネイマールを残してサイドMFも下がり、【4-4-1-1】になる。
注目選手(9人)
ネイマール(FW/パリ・サンジェルマン)
・”セレソンの皇帝”
・世界最高レベルのテクニックで違いを創り出す能力は天下一品。今までに数えきれないほどのサッカーファンの目を釘付けにしてきた。特にドリブルに至っては世界トップクラスといっても決して大げさではない。ドリブルで相手を翻弄し、個人技でもコンビネーションからでもゴールに繋げることができる。
・20代前半の頃は守備をあまりしないようなイメージだったが、前線での積極的な守備も見られる。また、FKも超一流でアイディアも豊富。
・最近では、中盤に下りて来てビルドアップを担うことも増え、彼とプレーする若手の適応と成長が早いと言われる存在に。
アリソン・ベッカー(GK/リバプール)
・”世界最高のGK”
・このポジションにおける必要なありとあらゆる全ての能力が揃った選手。GKにとって最も重要な「ゴールを守る」という点、そして現代のGKに求められる守備範囲の広さやビルドアップ能力という点の、双方の観点から見てどちらも完璧に近い。
・ポジショニング、レスポンス、クロス対応と高いゴールキーピング能力を備えているのはもちろん、特筆すべきはメンタリティの強さ。相手との接触を恐れない飛び出しや1対1、チームを救うビックセーブを涼しい顔でやってのける。
・足下の技術も非凡で、正確なつなぎのパスやキックでビルドアップの一端を担うことも可能。最後尾にこのようなGKがいることは、チームに大きな安心感を与えるだろう。
チアゴ・シウバ (DF/チェルシー)
・”セレソンの重鎮”
・チェルシーのトーマス・トゥヘル監督のもとでディフェンスの要としてプレーし、その模範的なリーダーシップと落ち着いたプレーで、チェルシーをCL制覇、クラブワールドカップ初優勝、スーパーカップ優勝、国内カップ戦の決勝進出へと導いた。
・身長は183センチで、センターバックとしては小柄だが、そこを身体能力と読みでカバーするのが持ち味。スピードやジャンプ力に優れているため、小柄な弱点を動き回ることで補う。ただ、喰い気味に動くことはなく、判断力の良さを高次元で持つディフェンダーで、飛び込むところと我慢するところを上手に使い分けることができる。軽率なプレーが目立ず、抜け目ないカーバーリングと丁寧なビルドアップはまさに名人芸。
カゼミーロ (DF/マンチェスター・U)
・”セレソンの大黒柱”
・DF顔負けの「守備力」が武器。フィジカルの強さを活かしたボール奪取能力と、センターバック顔負けの「空中戦」の強さを見せる。ヘディングの巧さはセットプレーの際に得点源としても活かされている。
・守備面が注目されることが多いが、攻撃面でも高い能力を持っている。フィード能力も決して低いわけではなく、足下の技術も高い。アンカーに求められる能力と照らし合わせると、世界でも屈指の完成度を誇っている。
マルキーニョス(DF/パリ・サンジェルマン)
・”頼れる闘将”
・スター選手が集まる代表と所属チームの両方でチームを統率する。
・センターバックとしては足下の技術に優れており、パス精度やゲームメイク力も高いため、右サイドバックや中盤の底も難なくこなせるユーティリティプレーヤー。対人戦には抜群の強さを誇り、相手のゴール前では得点源にもなれる。
・スピードと瞬発力、フィジカルも申し分なく、ラインコントロールや安定感も備えた、完全無欠のセンターバックだ。
ビニシウス・ジュニオール(FW/レアル・マドリード)
・”覚醒したブラジルの至宝”
・昨シーズンは2ケタ以上のゴールを決めて得点能力が開花。ドリブルだけでなく、点が取れるようになったことで、相手にとってより脅威に。
・特徴は、そのケタ外れのスピード。そのうえ、世界トップレベルの足元のテクニックを有する。スピードがある選手、足元のテクニックがある選手はほかにもたくさんいまるが、その両方が世界トップレベルの選手はそう多くない。
ルーカス・パケタ (MF/ウェストハム)
・”左利きのファンタジスタ”
・10代の頃から期待された逸材。ミランでは活躍できなかったものの、移籍したオリンピック・リヨンではシーズンを通して質の高いパフォーマンスを披露。「偽9番」にもソツなく対応し、不調のチームで際立つ存在感を放った。今季クラブ史上最高額で移籍したウェストハムでも非凡な活躍を見せている。
・アシスト数が多い選手ではないが、攻撃のキーになるような展開を変えるボールを出すのが上手。前線へのスルーパス、空いている味方のサイドの選手を余らせずに使えるのも持ち味。
・視野が広いので相手を揺さぶるようなボールの動かし方ができ、特に彼の場合はボールが足下にあるときに相手を複数引き付けることができ、そこから中距離のパスを出せると攻撃のリズムを一気に変えることができる。
アレックス・サンドロ(DF/ユベントス)
・”名だたるブラジル人の系譜を継ぐ超攻撃的SB”
・攻守に欠点がないのが魅力。チームの戦い方にフィットできる柔軟性があり、対峙するサイドアタッカーに「スピード」勝負で負けることも少なく、当たり負けもしない。
・的確にパスを散らしたり、ゴールを演出する正確な左クロスも持っている。その総合力の高さが、歴代の指揮官に重用されてきた理由だろう。
・チッチからは「守備でも試合を読む力が高く、攻撃ではスピードを生かしてサポートできる」と高評価。ネイマール、L・パケタら左サイドとの連係も抜群。
エデル・ミリトン(DF/レアル・マドリード)
・”守備で違いを創り出す逸材CB”
・昨シーズンは、セルヒオ・ラモスとバランが抜けたことで不安視されたレアル・マドリーのCBをダビド・アラバとの鉄壁コンビで支え、リーグ優勝とCL制覇に貢献。
・劣勢な状況でこそ本領を発揮する稀有なCB。数的不利だろうと、スペースを突かれようと、抜群の身体能力で難なく挽回する。
選手一覧
<GK>
No. | 名前 | 年齢 | 所属チーム | 代表成績(得点) | |
1 | アリソン・ベッカー | 30 | リバプール | 55試合 | ・ブラジルでプレーする時代に代表監督のドゥンガが足を使った攻撃の組み立てができることに注目して招集。 |
23 | エデルソン・モラエス | 29 | マンチェスター・C | 18試合 | ・名将ペップ・グアルディオラの哲学を体現する世界屈指のGK ・セービング能力もトップクラスながら、最大の魅力はGK離れした足下テクニックとパス精度 ・代表の練習の合間にアリソンと器用な足技を披露しあって遊ぶことが多い |
12 | ウェーベルトン | 34 | パルメイラス | 11試合 | ・4シーズン連続してブラジルリーグでベストGKに選ばれる ・総合力と安定感が抜群 |
<DF>
13 | ダニエウ・アウベス | 39 | プーマス | 124試合(8) | ・代表出場数歴代3位 ・東京五輪では精神的支柱として金メダル獲得 |
3 | チアゴ・シウバ | 38 | チェルシー | 107試合(7) | ・プレミア最年長選手 |
4 | マルキーニョス | 28 | PSG | 69試合(4) | ・10代の頃から賢く冷静。代表に欠かせない。 |
2 | ダニーロ | 31 | ユベントス | 45試合(1) | ・CBと右SBを試合に応じて堅実に務め、ビルドアップでの貢献度が高い ・A・サンドロとはサントス、ポルト、ユベントス、セレソンでプレー。 |
6 | アレックス・サンドロ | 31 | ユベントス | 37試合(2) | ・高給取りながらお金遣いは堅実 |
14 | エデル・ミリトン | 24 | レアル・マドリード | 22試合(1) | ・T・シウバとマルキーニョスの鉄板コンビを脅かす存在 |
24 | ブレーメル | 25 | ユベントス | 1試合 | ・強靭なフィジカルを活かした守備が魅力で、昨季はセリエA最優秀DFに選ばれた ・果敢なドリブルとパスで攻撃の起点にもなれる |
16 | アレックス・テレス | 29 | セビージャ | 6試合 | ・攻撃性能が高い左SBで、良質なクロスからチャンスを演出する ・攻撃力が注目されるが、代表では守備も惜しまない |
<MF>
5 | カゼミーロ | 30 | マンチェスター・U | 63試合(5) | ・チームに気合と自信を注入するスピーチは最高級 |
7 | ルーカス・パケタ | 25 | ウェストハム | 33試合(7) | ・昨年5月にセレソンに復帰してからは欠かせない存在に。 ・ネイマールとは、ゴール後のパフォーマンスを合わせるほど相性抜群で、ピッチの外でも仲良し。 |
8 | フレッジ | 29 | マンチェスター・U | 27試合 | ・小柄ながら豊富な運動量でピッチの至る所に顔を出すダイナモ ・中盤でボールを奪い攻撃の起点にもなれる ・「代表は攻撃の自由があり、攻守の繋ぎやアシスト、チャンスメイクを求められるが、どの役割でも問題ない」と自負 |
22 | エヴェルトン・リベイロ | 33 | フラメンゴ | 22試合(3) | ・左足からチャンスを演出する攻撃型MF ・2年連続でブラジルリーグ最優秀選手に選出された実績をもつ |
15 | ファビーニョ | 29 | リバプール | 27試合 | ・一級品のボール奪取力に長けたボランチ ・的確に長短のパスを散らして攻撃を組み立て、空中戦でも強さを発揮する |
17 | ブルーノ・ギマランイス | 25 | ニューキャッスル | 8試合(1) | ・運動量や走力に高いボール奪取力を備え、プレミアリーグでも評価を高める守備的MF ・攻撃センスも高い ・ジーコ運営の「CFZ」出身 |
<FW>
10 | ネイマール | 30 | PSG | 119試合(74) | ・ピッチ外でも新入りを盛り上げ、雰囲気作りを手助けする |
20 | ビニシウス・ジュニオール | 22 | レアル・マドリード | 14試合(1) | ・チッチとアンチェロッティが常に話合いながら成長を手助けしてきた |
18 | ガブリエル・ジェズス | 25 | アーセナル | 56試合(19) | ・アーセナルでは才能を発揮するも、9月の代表ウィークでは招集されず |
9 | リシャーリソン | 25 | トッテナム | 36試合(14) | ・謙虚だが、出場すればゴールかアシストの活躍 ・得点後の鳩ダンスで人気者に |
11 | ラフィーニャ | 25 | バルセロナ | 9試合(3) | ・昨年10月の代表初スタメンで2得点。「この夜が終わらなければ、、、」と感激 |
19 | アントニー | 22 | マンチェスター・U | 9試合(2) | ・高い技術で魅せるサッカーを体現 ・闘病中の少女ファンを精神的に支え続ける面も |
25 | ペドロ・ギリェルミ | 25 | フラメンゴ | 2試合(1) | ・現在のセレソンに欠けるボックスタイプのストライカー。空中戦に強く、ポジショニングも的確 ・国内で評価を高め、9月のチュニジア戦で代表初ゴールを記録し、一躍W杯メンバー候補に ・チッチ監督が「典型的な背番号9」と高評価 |
21 | ロドリゴ | 21 | レアル・マドリード | 5試合(1) | ・両足、ヘッド、シュート、ドリブルセットプレーと武器が多い。次世代の10番との声も |
26 | ガブリエウ・マルティネッリ | 21 | アーセナル | 3試合 | ・ブラジル2部から飛躍。 ・二重国籍のイタリアから打診も母国を選択 |
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