カタールW杯に出場する全32チームを紹介する。
今回は、最終予選の最終節で強豪ポルトガルとの直接対決を制し、見事にカタール行きを決めた、ヨーロッパ代表のグループG・「セルビア代表」。
基本情報
出場回数 | 13回目(2大会連続) |
最高成績 | 4位 |
FIFA ランキング | 25位 |
首都 | ベオグラード |
人口 | 691万人 |
監督 | ドラガン・ストイコビッチ |
愛称 | オルロビ(鷲) |
<直近6試合の成績>
6/6 | UNL | スロべニア | 〇 | 4-1 | H |
6/10 | UNL | スウェーデン | 〇 | 0-1 | A |
6/13 | UNL | スロベニア | △ | 2-2 | A |
9/25 | UNL | スウェーデン | 〇 | 4-1 | H |
9/28 | UNL | ノルウェー | 〇 | 0-2 | A |
11/19 | 親善試合 | バーレーン | 〇 | 5-1 | N |
・前回のロシアW杯ではグループステージ敗退、昨夏に開催されたEUROはプレーオフ敗退で本大会出場を逃すなど、近年のセルビア代表は、そのタレントと質に見合った結果を残せずにいた。そんなチームを立て直すべく新指揮官に任命されたのが、英雄ストイコビッチだった。
・昨年3月の就任後、最初の招集で”ピクシー”は、当時キャプテンを務めていたコラロフ(今年6月に現役引退)ら数人を選外にするなど改革を断行。すると、ブラホビッチら若手の台頭もあって攻撃的に生まれ変わったチームは、今最終予選で強豪ポルトガルとの直接対決を制し、見事にカタール行きを決めた。
・長年チームを支えてきたマティッチ(ローマ)こそ代表引退したが、タディッチら経験豊かな選手も健在。9月には、ブラホビッチとミトロビッチで2トップを形成する超攻撃的なシステムで、スウェーデンとノルウェーに連勝を記録。難敵が揃う本大会でもリスキーな戦い方を採用し、ピクシーの下でチームが一致団結できれば、大会の”ダークホース”に成りうる可能性も十分にありえる。
監督
(名前) | ドラガン・ストイコビッチ |
(生年月日) | 1965.3.3(57) |
(国籍) | セルビア |
(就任) | 2021年3月 |
・ ユーゴスラビア代表として90年と98年のW杯に出場。優美なテクニックで見るものを魅了し、”ピクシー(妖精)“の愛称で親しまれた。
・昨年3月の代表監督に就任後は、積極的にメンバーを入れ替え、システムに関しては一貫して3バックを採用。そのカリスマ性で低迷するチームを立て直し、安定感を増したチームは、W杯予選8試合で6勝2分の好成績を収め、最終的にポルトガルとの争いを制してチームをカタールへ導いた。
基本フォーメーション・戦術
3バックに守備を委ねた超攻撃的スタイル 中東の地で波乱を起こせるか
<基本フォーメーション>

<攻撃編>

・前線には高さがある選手を揃えているものの、安易にロングボールを使うケースは多くない。高めの位置に構えるウイングバックにボールを送り、そこからS・ミリンコビッチ・サビッチや2トップとの連係で相手ゴールを脅かすのが基本。
・そこで大きな役割を果たすのがタディッチ。昨季アヤックスで二桁ゴール・二桁アシストを記録したベテランは、ハーフスペースに流れてウイングバックとの連係でサイドから崩したり中盤に降りてボールを受け、すかさず背後のスペースを狙ったりと、変幻自在のポジショニングで相手を攪乱する。
・ストライカー陣では、ヨビッチこそ昨年まで所属したレアル・マドリードで力を発揮しきれなかったが、大きなステップを果たしたブラホビッチ、昨季絶好調のミトロビッチの存在は、相手にとっては脅威だ。
・一方で、ウイングバックの背後のスペースが弱点で、六月のスウェーデン戦・スロベニア戦で裏を突かれてピンチを招く場面が散見された。しかし、ウイングバックが攻め上がらなければ攻撃が単調になってしまうので、決勝トーナメント進出を果たすためにもリスクを背負う覚悟が必要だ。
<守備編>

・システムに関しては一貫して3バックを採用し、守備時は両ウイングバックが下がり5バックを形成。スペースを埋めつつ高さを生かしてクロスに対処する。2トップは縦の関係を作り、カウンターに備える。
・【3-4-1-2】が基本だが【3-4-2-1】を試すなど、細かい設定に関して柔軟な変化を見せている。
・3バックはベリンコビッチ、パブロビッチ、ミレンコビッチの三人で固定。指揮官から厚い信頼を寄せられる3人は全員が高さと強さを兼ね備え、対人戦で違いを発揮する。
・中盤のルキッチ、グデリはともに献身性が高く、自陣に生じたスペースを抜かりなくカバーしてくれる頼もしい存在だ。この守備陣により両ウイングバックが高い位置を取ることを可能にしている。
注目選手(4人)
ドゥシャン・ブラホビッチ(FW/ユベントス)
・”セルビアの至宝”
・高さ、強さ、速さを兼ね備えた万能ストライカー。 2020年にデビューの代表でも別格の存在に。
・DFを背負ってのポストプレー、裏のスペースをアタックする動き、ペナルティーエリア内でのフィニッシュワークはもちろん、オープンスペースでのカウンターアタックまで、CFに求められる全てのプレーを高いレベルでこなすモダンなスタイルを持っている。
・絶対的なクオリティーという点では、スピード、クイックネス、シュートの精度をはじめとするテクニックにおいて、ハーランドにはやや及ばないが、それでもワールドクラスのCFに成長するだけのポテンシャルを秘めている。
ドゥシャン・タディッチ (FW/アヤックス)
・”攻撃を牽引するキャプテン”
・チームメイトから信頼と尊敬を集める絶対的リーダー。アヤックスで4年連続2桁ゴール・アシストと、衰え知らず。エールディビジで6度アシスト王を受賞。
・広い視野と高度なテクニック、そして天性の閃きを武器に決定的な仕事をやってのける。ドリブル突破やミドルシュートなど自己主張の強いスタイルだが、それ以上にアシストの質はトップレベル。チーム随一のテクニシャンで、ボールを失うことは稀。
セルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチ (FW/ラツィオ)
・”サージェント(軍曹)”
・一級品のフィジカルと技術、戦術理解力で、大きな違いを生み出す切り札。巧みにスペースを使い分け、ライン間で縦パスを受け取れば、正確性と芸術性を併せ持つ決定的なラストパスでゴールをお膳立てする。
・空中戦にも強く、ロングボールのターゲット役にも優れる。オフ・ザ・ボールの裏抜けでフィニッシュに持ち込み、ゴールも決める。毎年のようにメガクラブから関心を寄せられるも、ブレない”ラツィオ愛”を貫く。
アレクサンダル・ミトロビッチ(FW/フルアム)
・”セルビアの主砲”
・代表76試合で50ゴールという驚異的なペースでゴールを量産する、セルビアの最多得点記録保持者。昨季はイングランド2部の記録を大幅に更新する43ゴールを量産し、フルアムをプレミアリーグ昇格に導いた。
・並外れたゴールへの嗅覚と空中線に絶対的に強さを見せ、如何なるパターンでも得点できる。一方で、熱くなりすぎてカードを貰う悪い癖も。
選手一覧
<GK>
No. | 名前 | 年齢 | 所属チーム | 代表成績(得点) | |
12 | プレドラグ・ライコビッチ | 27 | マジョルカ | 28試合 | ・不振のドミトロビッチに代わり正ゴールキーパーを務める。 ・チェルシーでプレーするのが夢。 |
1 | マルコ・ドミトロブィッチ | 30 | セビージャ | 19試合 | ・スペインでキャリアを築くベテランGK。 ・PKキッカーを務めた経験が |
23 | バニャ・ミリンコビッチ・サビッチ | 25 | トリノ | 4試合 | ・2m越えの巨漢を活かしたハイボール処理に自信。 ・MFサビッチは兄 |
<DF>
4 | 二コラ・ミレンコビッチ | 25 | フィオレンティーナ | 37試合(3) | ・恵まれた体格を活かした空中戦は迫力満点で、メガクラブが関心を示すCBの大器。 ・機動力にパススキルも上等 |
5 | ミロシュ・べリコビッチ | 27 | ブレーメン | 20試合 | ・スイス生まれで、スパーズのアカデミー育ち ・中盤でのプレーも好む |
2 | ストラヒニャ・パブロビッチ | 21 | ザルツブルグ | 20試合(1) | ・若手ながら監督の信頼が厚い ・フィジカルを活かし敵の好機を潰す |
13 | ステファン・ミトロビッチ | 32 | ヘタフェ | 32試合 | ・国内外を渡り歩く経験豊かなCB ・ベテランらしい職人芸で地上戦・空中戦ともに強さを発揮するが、ビルドアップに難あり ・昨年の日本戦ではキャプテンマークを巻いた |
25 | フィリップ・ムラデノビッチ | 31 | レギア・ワルシャワ | 19試合(1) | ・攻守で積極的にデュエルを挑み、左サイドから強烈なクロスを供給する |
3 | ストラヒニャ・エラコビッチ | 21 | レッドスター | 1試合 | ・”セルビアの未来”と称される逸材CB ・体重がそこまで重くないため、素早く機敏な対人スタイルで70%以上の勝率を誇る ・空中戦でも脅威 |
15 | スルジャン・バビッチ | 26 | アルメリア | 2試合 | ・長身とパワープレイが取り柄のCB ・2015年にセルビア代表がU-20W杯を制した時の主力メンバー |
<MF>
8 | ネマニャ・グデリ | 31 | セビージャ | 48試合(1) | ・攻守の切り替え役として不可欠で、複数のポジションをこなすユーティリティ性やチームを鼓舞する闘争心も特筆に値する ・昨季は負傷者続出のセビージャで奮闘 |
17 | フィリプ・コスティッチ | 30 | ユベントス | 48試合(3) | ・昨季はEL優勝の源動力になり、キャリアのピーク ・正確無比な左足で局面を変える |
6 | ネマニャ・マクシモビッチ | 27 | ヘタフェ | 38試合 | ・圧倒的なフィジカルを利用した高強度のプレッシングでボール狩りを遂行 |
20 | S・ミリンコビッチ・サビッチ | 27 | ラツィオ | 34試合(6) | ・崩し担当 |
16 | サシャ・ルキッチ | 26 | トリノ | 30試合(1) | ・攻守でともに輝けるが、警告が多い ・センターラインならトップ下からCBまで対応可 |
26 | マルコ・グルイッチ | 26 | ポルト | 17試合 | ・プレーメイクにとどまらず、打点の高いヘッドやミドルでゴールを狙う |
19 | ウロシュ・ラチッチ | 24 | ブラガ | 8試合 | ・ボールを奪い取ると、力強く持ち運び、推進力をもたらす。 ・ミドルは破壊力抜群 |
7 | ネマニャ・ラドニッチ | 26 | トリノ | 35試合(5) | ・スピード、フィジカル、テクニックの3つを融合させて守備陣を突破する ・ローマ、ベンフィカなど名門を渡り歩く |
24 | イバン・イリッチ | 21 | エラス・ベローナ | 3試合 | ・ボックス・トゥ・ボックス型だが、左足でゲームメイクもできる才能の塊 ・マンチェスター・Cのアカデミー出身 |
14 | アンドリヤ・ジヴコビッチ | 26 | PAOK | 28試合(1) | ・小柄ながらテクニックを活かしたカットインから左足でのクロスやパンチ力のあるシュートが魅力 |
22 | ダルコ・ラゾビッチ | 32 | ヴェローナ | 25試合 | ・クラブでは左WB、代表では右WBを務め、さらに攻撃的MFもできる ・縦への推進力が魅力 |
<FW>
10 | ドゥシャン・タディッチ | 34 | アヤックス | 88試合(18) | ・今シーズンはインサイドハーフもこなす |
9 | アレクサンダル・ミトロビッチ | 28 | フルアム | 74試合(46) | ・タディッチとは阿吽の呼吸 |
11 | ルカ・ヨビッチ | 24 | フィオレンティーナ | 26試合(9) | ・アクロバティックなプレーでネットを揺らす点取り屋 ・フランクフルトで将来を嘱望されたが、レアルマドリードでキャリアが停滞し、今季からフィオレンティーナに移籍 |
18 | ドゥシャン・ブラホビッチ | 22 | ユベントス | 14試合(7) | ・FKも決められる |
21 | フィリプ・ジュリチッチ | 30 | サンプドリア | 36試合(4) | ・優れた個人技で相手を欺き、チャンスを演出するファンタジスタ |
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