カタールW杯に出場する全32チームを紹介。
今回は、EURO2020こそベスト16敗退と不覚を取ったが、18年ロシアW杯と21年秋のネーションズリーグで優勝という結果が示すように、ヨーロッパ最強レベルの総合力を誇り、カタールW杯でも優勝候補の筆頭に挙げられる、ヨーロッパ代表のグループD・「フランス代表」。
基本情報
出場回数 | 16回目(7大会連続) |
最高成績 | 優勝(2回目) |
FIFA ランキング | 4位 |
首都 | パリ |
人口 | 6790万人 |
監督 | ディディエ・デシャン |
愛称 | レ・ブルー(青) |
<直近6試合の成績>
6/4 | UNL | デンマーク | ● | 1-2 | H |
6/7 | UNL | クロアチア | △ | 1-1 | A |
6/11 | UNL | オーストリア | △ | 1-1 | A |
6/14 | UNL | クロアチア | ● | 0-1 | H |
9/23 | UNL | オ―ストリア | 〇 | 2-0 | H |
9/26 | UNL | デンマーク | ● | 2-0 | A |
・世界王者として臨んだ昨年のEUROはスイス相手に不覚を取り、まさかのラウンド16で敗退。フランスにとって「失敗」と言える結果だった。ゆえに2連覇の懸かるカタールW杯に対する思いは強いはずだ。
・組み分けに恵まれたヨーロッパ予選は無敗で1位通過したが、グループ2位のウクライナには2戦ともにドロー。今年6月のネーションズリーグは4試合で未勝利(2分2敗)、9月はオーストリアに勝ちはしたがW杯で同組のデンマークには2連敗と、チーム状況が好調だとは言えない。それでもデシャン監督に焦燥感はない。質・量ともに世界最高レベルにあり、コンディションされ整えば力を発揮できるという絶対の信頼があるからだ。
・ベンゼマ、エムバぺ、グリーズマン、ジルー、コマンを擁する攻撃陣は、カタールW杯に出場するチームの中で最も充実したクオリティー・得点力を誇る。不安要素は、これまで不動の支柱だったGKロリス、CBバラン、MFカンテが低調、MFポグバが負傷でプレーできないことに加えて、直近6試合で1勝しか挙げられていないデシャン監督だ。
監督
名前 | ディディエ・デシャン |
生年月日 | 1968.10.15(54) |
国籍 | フランス |
就任 | 2012.7月 |
・2012年から指揮官を務め、EURO準優勝、ワールドカップ制覇と”レ・ブルー”を世界のトップに導いた名将。
・選手と監督の両方でワールドカップを制覇した史上3人目の人物に。
・ASモナコで監督のキャリアをスタートさせ、03/04チャンピオンズリーグ決勝に導きリーグアン年間最優秀監督を受賞。06/07シーズンには、カルチョ・スチャンダルでセリエBに降格したユベントスをセリエAに昇格させた。その後は、マルセイユを率いて09/10リーグアン優勝、クープ・ドゥ・ラ・リーグでは3連覇を果たした。
・フランス代表として、103試合に出場。1998年、母国パリで行われたワールドカップでは、キャプテンを務めて優勝。
・元フランス代表チームメイトのエリック・カントナから「水上運搬船」(フランス語: le porteur d’eau)の愛称で呼ばれていた。
基本フォーメーション・戦術
不安要素の守備を圧倒的な攻撃力でカバーし 史上3カ国目のW杯2連覇に挑む
<基本フォーメーション>

・今大会の「顔」となりうるベンゼマとエムバぺ、百戦錬磨のロリスやポグバ、カンテら超一流が並ぶタレント軍団にして優勝候補。限られた出番の中でよく点に絡むベン・イェデル、今年3月にデビューしたエンクンクなど控え要員の充実も際立つ。
・2012年の就任から長らく4バックを基本にチームを構築してきたデシャン監督だが、昨年秋から3バックへの移行を進めている。昨年9月のフィンランド戦から【3-4-3(3-4-1-2)】を継続し、ネーションズリーグ準決勝のベルギー戦と決勝のスペイン戦を含む7戦7勝と結果を出している。
・代表に復帰したベンゼマとエムバぺのクオリティー・得点力を最大限に活かすには、1トップではなく2トップが最適解と判断。そして攻守両面でそれをバランスよく支えるチームの構造を追及した末、【3-4-1-2】というシステムにたどり着いた。
・GKを含めた最終ラインのビルドアップ能力は高いとは言えず、中盤にも攻撃のリズムと方向性をコントロールする純粋なレジスタが不在という現陣容は、ポゼッションによるゲーム支配に向いていない。それを前提に考えれば、シンプルな縦志向の強いパスワークで前線にボールを届ける攻撃と、チームの重心を下げてMF/DF陣の強靭なフィジカルを活かして相手の攻撃を受け止め、そこから逆襲に転じる守備を組み合わせたデシャンのチーム構築は、極めて理に適ったものだと言える。
<攻撃時>

・このチームの最大の武器は”ベンゼマ&エムバぺ&グリーズマン”の強力トリオの破壊力。ペナルティーエリア内のフィニッシュワークに関しては世界最高レベルのベンゼマに、オープンスペースで前を向いたら誰にも止められないスピードを誇るエムバぺ。そのクオリティーを最大限に発揮するには、ポゼッションによるゲーム支配を重視せず、あえてチームの重心を下げて受動的に振舞い、自陣でのボール奪取から前方に十分なスペースがある状況でのロングカウンターが最大の武器。
・相手に引き込まれる場合は、敵陣でのポゼッションを確立するが、安易に人数を掛けずに攻守のバランスを優先して、アカッター陣の個人能力に局面打開を依存する。
・前線はベンゼマ、エムバぺ、グリーズマンに加えて、基準点型のジルー、ウイング/STのマルシャル、デンべレ、エンクンクと控えも粒揃い。質・量ともに世界最高レベル。
<守備時>

・最終ラインは、ビルドアップを含めた絶対的な個のクオリティーにおいて世界トップを争うタレントこそいないが、ヴァランやリュカ・エルナンデスをはじめとするCB陣はいずれも強靭なフィジカルとスピードを併せ持ち、オープンスペースを含めた1対1でも、自陣に引いての組織的守備でも十分な安定感を見せる。
・ラインコントロールをはじめとする連携が重視される4バックと比べて、より高い密度で中央のスペースをカバーできる3バックの方が、現陣容での失点のリスクも抑制できる、と判断して3バックを採用。
・ビルドアップのクオリティー自体は平凡なレベルに留まっており、スムーズに敵陣までボールを運ぶ頻度は決して高くなく、最終ラインにマンツーマンでハイプレスを仕掛けられると困難に陥ってロングボールで逃げるシーンも少なくない。
注目選手(5人)
キリアン・エンバぺ (FW/パリ・サンジェルマン)
・”天下無双のストライカー”
・並外れたスピードと桁違いの決定力で、新時代を牽引する”怪童”。スピードを武器とする選手とは、また次元が異なるスプリント力を誇る。特にカウンターの殺傷力は凄まじく、広大なスペースを与えれば致命的なダメージを相手に負わせる。
・極めつけは、その得点感覚。ゴール前でも冷静に振舞い、両足から遜色なく強烈なシュートを放つ。戦術理解度とパス精度も年々向上し、自らゴールを決めるだけでなく、ラストパスを供給してアシストを量産するなど、より完璧に近いアタッカーに。
・昨季は4シーズン連続の得点王に加えてアシスト王にも輝くリーグ・アン史上初の快挙を達成。日進月歩の勢いで進化を続け、今やレ・ブルー、PSG、リーグ・アンを代表する選手に。
カリム・ベンゼマ (FW/レアル・マドリー)
・”世界一のアタッカー”
・1人でゴールからチャンスメイクまでの複数のタスクを高クオリティーでこなす万能型FW。的確なポジショニングからの絶妙な動き出しでスペースに飛び込めば、最後は説明不要の得点力でゴールを決める。強靭なフィジカルと体幹を活かして空中戦にも強く、セットプレーでも常に相手の脅威となる。
・相手を引きつける高いボールキープ力でスペースを創り出し、ラストパスで味方のゴールをお膳立てするプレーも得意としている。中盤やサイドに加わってビルドアップでも貢献できるなど、視野の広さや高いサッカーIQも魅力。
・昨シーズンは34歳にして、キャリアハイとなるリーグ戦27得点、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では12試合で15得点を挙げ、得点王をダブル受賞。10月にはバロンドールを受賞。
アントワーヌ・グリーズマン (FW/アトレティコ・マドリー)
・”レ・ブルーのエース”
・バルセロナでの有頂天の時期とは様変わりして、本来の姿を取り戻した世界最高峰の技巧派アタッカー。フィジカル能力に依存せずに、技術と視野の広さが武器。積極的に中盤に下りてくれば、ライン間でボールを受け取り、ターンやフリックを駆使して攻撃のリズムを作る。
・インテンシティの高いディフェンス能力を活かして黒子役も厭わず、守備にも献身的。前線から相手のボールホルダーにプレッシャーをかけ、自陣の深い位置まで戻って守備をする運動量も大きな魅力。
・フランス代表ではデシャン監督から全幅の信頼を寄せられ、自由にプレーする裁量を与えられている。その分、彼のコンディションで結果が左右されることも。
オレリアン・チュアメニ (MF/レアル・マドリー)
・”NEXT カンテ”
・最大の武器は、ボール奪取数とタックル数で5大リーグ最多を記録した”一級品の守備スキル”。ボランチとして中盤の最後尾を支え、非凡なスピードと長い手足を使った深いタックルでピンチを未然に防ぐ。大柄なサイズながらピッチの至る所に出没し、中盤の流動性を上げる。流れの中でインサイドMFとの役割交換も可能。
・足下技術も高く、ボールを奪えば素早く起点となるパスを供給する。攻撃時はボールに触りたがり、ビルドアップに加わりながらフィニッシュにも参加する。正確なロングフィードでサイドチェンジも難なくこなす。
テオ・エルナンデス (DF/ミラン)
選手一覧
No. | 名前 | 年齢 | 所属チーム | 代表成績(得点) | |
1 | ウーゴ・ロリス | 35 | トッテナム | 139試合 | ・主将としてチームを支える守護神 ・セーブ能力は高いが、足元に不安 |
23 | アルファンス・アレオラ | 29 | ウェストハム | 3試合 | ・反射神経が良く、カウンターを導く正確なパス出しも |
16 | スティーブ・マンダンダ | 37 | レンヌ | 34試合 | ・ベテランになっても反射神経とセービング能力の高さは健在 ・9月に代表へ返り咲いた |
4 | ラファエル・バラン | 29 | マンチェスター・U | 86試合(5) | ・圧倒的なスピード、老獪な駆け引き、的確な判断でデュエルを制する ・デシャン体制に不可欠な存在 |
21 | リュカ・エルナンデス | 26 | バイエルン | 32試合 | ・闘争心溢れるCB・左SBで、高い危機察知能力を活かしてスペースを的確にカバー |
2 | バンジャマン・パバール | 26 | バイエルン | 45試合(2) | ・強豪バイエルンでCBと右SBを安定してこなす守備職人 ・4バックで輝くが3バックでは出番を失う |
18 | ダヨ・ウパメカノ | 23 | バイエルン | 7試合(1) | ・対人戦の強さに加えて、裏抜けを許さない圧倒的なスピードを持つCB ・攻撃の起点にもなれるフィード能力の高さも魅力 |
3 | アクセル・ディザジ | 24 | ASモナコ | 0 | ・抜群の身体能力を誇り、アグレッシブに前に出て相手を潰す守備が特徴 ・若手ながらリーダーシップも兼ね備える |
5 | ジュール・クンデ | 24 | バルセロナ | 11試合 | ・小柄ながら抜群の身体能力と高いサッカーIQを誇るテクニシャン ・打点の高いヘディングで攻撃にも貢献 |
22 | テオ・エルナンデス | 25 | ミラン | 7試合(1) | ・ユース時代は代表招集をサボるほどヤンチャだった |
17 | ウィリアム・サリバ | 21 | アーセナル | 5試合 | ・フランスでの武者修行で成長を遂げ、アーセナルでは開幕からスタメンの座を掴む ・昨シーズンのリーグアン最優秀ヤングプレイヤー |
24 | イビラヒマ・コナテ | 23 | リバプール | 2試合 | ・恵まれたフィジカルとスピードを活かして、ボールホルダーの自由を奪い、味方に正確なパスを送り出す現代的なCB ・負傷で開幕に出遅れる |
8 | オレリアン・チュアメニ | 22 | レアル・マドリー | 12試合(1) | ・21年9月にフランス代表デビューを飾ると、デビューから8試合連続出場を果たし、瞬く間にレ・ブルー(フランス代表の愛称)の中心選手となっている。 |
25 | エデュアルド・カマビンガ | 20 | レアル・マドリー | 3試合(1) | ・パス捌き、長い足を使ったボール奪取、ドリブルでの推進力は魅力 ・局面に応じて攻守の両面で貢献できる中盤のリレー役 ・17歳で代表デビュー |
13 | ユスフ・フォファナ | 23 | ASモナコ | 2試合 | ・チュアメニとの絶妙なコンビネーションで中盤を席巻する期待の成長株 ・圧倒的なスプリント力と的確な守備対応でボールを奪い、自らドリブルで持ち上がって攻撃を活性化させる |
14 | アドリアン・ラビオ | 27 | ユベントス | 29試合(2) | ・華麗なスキルに豪快な推進力・展開力を備える屈強なセントラルMF |
15 | ジョルダン・ヴェレトゥ | 29 | マルセイユ | 5試合 | ・広範囲を動き回ってのボール回収力と長短のパスを駆使した展開力が魅力 ・FKの威力も威力も抜群 |
6 | マテオ・ゲンドゥ―ジ | 23 | マルセイユ | 6試合(1) | ・昨シーズンにサンパリオ監督の下で覚醒し、フランス代表にも定着 ・ボールを前進させる天性の才能があり、ボランチに加えてトップ下もこなす |
7 | アントワーヌ・グリーズマン | 31 | アトレティコ・マドリー | 108試合(42) | ・昨シーズンは不完全燃焼に終わっただけに、今シーズンは目の色が変わり本来の姿を取り戻しつつある。 |
19 | カリム・ベンゼマ | 34 | レアル・マドリー | 97試合(37) | ・昨年のEUROで5年8カ月ぶりに代表復帰。その後16戦10ゴールと決定力は健在 |
10 | キリアン・エムバぺ | 23 | パリ・サンジェルマン | 57試合(27) | ・パリへの愛を貫きPSGとの契約を延長 |
11 | ウスマンヌ・デンべレ | 25 | バルセロナ | 27試合(4) | ・恐怖のドリブラー ・予測不能な両足を駆使したドリブルでマーカーを剥がし、巨大な違いと決定機を作り出す個の力は格別 |
12 | ランダル・コロ・ミュアニ | 23 | フランクフルト | 2試合 | ・今季ブンデスリーガ初挑戦ながら、7ゴール・10アシストと大ブレイク中の大型ストライカー ・持ち前の身体能力を活かした空中戦の強さに加えて、ダイナミックなドリブル突破も魅力 |
26 | マルクス・テュラム | 25 | ボルシアMG | 4試合 | ・昨季は大スランプに陥るも、今季は開幕からゴールを量産 ・ヘッドやシュートセンスは一級品 |
20 | キングスレイ・コマン | 26 | バイエルン | 40試合(5) | ・サイドを切り裂くブンデスリーガ屈指のウインガー ・代表ではWBとして攻守に重要な役割を果たす |
9 | オリビエ・ジルー | 36 | ミラン | 112試合(48) | ・ワンタッチで強引にゴールを決めるフィニッシャー ・大事な試合で結果を出すも、代表ではベンゼマの控えに甘んじる ・アンリの歴代最多ゴールまであと3ゴールに迫る |
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