カタールW杯に出場する全32チームを紹介。
今回は、予選を無敗で勝ち抜いてW杯出場へ導いたハリルホジッチ監督を8月に解任し、国民が望む監督と陣容の下で史上2度目の決勝トーナメント進出を狙う、アフリカ代表のグループF・「モロッコ代表」。
基本情報
出場回数 | 6回目(2大会連続) |
最高成績 | ベスト16 |
FIFAランキング | 22位 |
首都 | ラバト |
人口 | 3603万人 |
監督 | ワリド・レグラギ |
愛称 | リオン・デ・ラトラス (アトラスのライオン) |
<直近6試合の成績>
6/2 | AFCON | アメリカ | 〇 | 3-0 | H |
6/10 | AFCON | 南アフリカ | 〇 | 2-1 | H |
6/14 | AFCON | リベリア | 〇 | 0-2 | A |
9/24 | 親善試合 | チリ | 〇 | 2-0 | H |
9/28 | 親善試合 | パラグアイ | △ | 0-0 | A |
11/18 | 親善試合 | ジョージア | 〇 | 3-0 | N |
・19年夏にハリルホジッチが監督に就任してからは40試合で28勝8分4敗の好成績で、W杯予選は7勝1分と無敗で勝ち抜いた。しかし、8月に監督交代劇が勃発。ツィエクやマズラウィといったスター選手との確執に加えて国民からの不信感など、火種はくすぶり続けていた。
・後任のレグラギ監督に与えられた準備期間はわずか3カ月とあまりに短い。9月の代表戦ではツィエク、マズラウィを招集し、チリとパラグアイ相手に1勝1分の好スタートを切った。戦術と連携を深める時間が皆無なだけに、新監督の手腕に注目が集まる。
・欧州で活躍する国外組を中心としたチームには、若く才能豊かな人材が揃い、士気も高い。4年前は未勝利で終わるも、スペインには2-2、イランとポルトガルには0-1の惜敗と健闘した。今大会でもクロアチアとベルギーを蹴落とし、グループステージを突破しても不思議ではない。
監督
(名前) | バイッド・ハリルホジッチ |
(生年月日) | 1952.10.15(70) |
(国籍) | ボスニア・ヘルツェゴビナ |
(就任日) | 2019.8月 |
・モロッコに出場権をもたらし、異なる4か国(他はコートジボワール、アルジェリア、日本)をW杯出場へと導いた史上初の監督に、自分にも他人にも厳しく、選手や協会幹部と度々衝突するが、優れた戦術家であり、多くの識者がその手腕を評価する。
・就任以来、【4-2-3-1】【4-3-3】【4-4-2】【3-5-2】【4-1-4-1】など数々のシステムをテスト。その都度、システムに合った選手を当てはめてきたため、おおむね顔ぶれが決まっているDFライン以外は主力メンバーも戦術も定着していない。
・プレースタイルは超攻撃的で、6月のアフリカ・ネーションズカップ予選、南アフリカ戦で29本ものシュートを浴びせたように、チャンスを多く作りだしたが、得点はわずかに「2」。守備強化と決定力アップが本大会までに解消すべき課題。
・2022年8月11日にモロッコ代表監督を解任される。
(名前) | ワリド・レグラギ |
(生年月日) | 1975.9.23(47) |
(国籍) | モロッコ |
(就任日) | 2022年8月 |
・”モロッコのグアルディオラ”
・ハリルホジッチの解任を受けて新監督に就任。9月の親善試合では、前政権で冷遇されていたツィエクやマズラウィを招集するなど国民が求める陣容でカタールW杯に挑む。
・引退後はモロッコ代表のアシスタントを経験。その後はモロッコの強豪であるウィダード・カサブランカを率いて国内制覇とアフリカ王者に導く。
基本布陣&戦術
高いタレント力を持つ選手たちが集結 監督交代の荒治療は吉と出るか
<基本フォーメーション>

<攻撃編>

・キープレイヤーは右SBのハキミ。攻撃の局面で司令塔の役割を務める。
・ツィエクの復帰で前線は各段に活性化された。ツィエクとハキミの連携により攻撃の選択肢が増加したことが要因で、ショートパスを多用する組み立てに、ツィエクの左足から創り出されるダイレクトなチャンスメイクが足され、得点パターンが豊富になった。
・ビルドアップはCBのサイスがボランチのアムラバトから展開され、ハキミは大胆に右サイドを上がり、その彼に十分なスペースを与えるべく、全体はやや左に寄る形をとる。トップはハキミからのクロスを想定してゴール前に詰め、攻撃的MFはパスの中継点となるか、あるいは相手DFを釣り出す動きでハキミをサポート。シュート力が高いハキミが、2トップと並ぶ位置に上がった3トップの形も珍しくない。
<守備編>

・左サイドはハキミの動きとバランスを取りつつ上がるが、低めの位置に残ってCBの2人とともに3バックに近い形を作る場合もある。ピッチ全体のバランサーである守備的MFのアムラバトはハキミが上がって空いた右のスペースをカバーするほか、相手ポゼッションに転じたら即座にCBの前のスペースをケアする。
・ラインはかなり高い位置まで上がることが多い。相手ボールになってもすぐにリトリートせずに、激しいプレスでボール奪回を試みる。そのためのカウンターには弱く、ゴールを奪われることも少なくない。また、守備に転じた際にDF陣は高い位置から猛スピードで戻る必要があるため、体力的負担が大きい。
注目選手(4人)
ハキム・ツィエク (FW/チェルシー)
・”一瞬の閃きで決定的な違いを生み出すマジシャン”
・ワールドクラスの左足を持ち、繊細なタッチの独特なドリブルや創造性溢れるパス・クロス、強烈なミドルシュートを放つ。華麗なボールコントロールで相手に囲まれた局面を打開できる。
・細身ではあるがハードワークも怠らない。
・ハリルホジッチ前監督との確執からA代表に招集されず一時は代表引退も表明したが同監督の解任を受けて、レグラギ監督の下で復帰。
アシュラフ・ハキミ(DF/パリ・サンジェルマン)
・”爆速SB”
・スピードとダイナミズムに富んだプレーで、守備に攻撃にフル回転する大黒柱。ドリブルとワンツーを織り交ぜた仕掛けで相手を振り切り、鋭いクロスでビッグチャンスを演出する。
・ダイアゴナルランでゴール前に侵入して、自らネットを揺らすストライカー並みの得点力も備える。その攻撃センスは折り紙付きだ。やや大雑把な守備は要改善。
ユセフ・エン・ネシリ(FW/セビージャ)
・”長身アタッカー”
・現代表でのトップスコアラー。189cmの長身と屈強なフィジカルを活かしてCFを主戦場にプレー。コースを狙うことはせず、本能的にワンタッチでシュートを放つ。
・ダイナミックなドリブルでゴールに迫れば、自慢の跳躍力で空中戦も制し、ヘディングでゴールを決めるのが得意。安定したボディバランスで複数の選手を背負いボールの収め所にもなれる。スピードのある相棒との2トップで生きるタイプ。
ボノ(GK/セビージャ)
・”サモーラ賞GK”
・身長192cmを誇る大柄な体格と長い手足を活かしてゴールを物理的に塞ぐ。ポジショニングやハンドリング能力も高く、ハイボール処理能力においてはラ・リーガでもトップレベルの選手だ。
・昨シーズンは、所属チームが後半から失速する中でビックセーブを連発。昨季はクルトワに競り勝ち、1試合あたりの平均失点数が最も少ないGKに与えられるサモーラ賞を受賞。カナダ生まれの苦労人は、ラ・リーガ随一の守護神に成長した。
選手一覧
<GK>
No. | 名前 | 年齢 | 所属チーム | 代表成績(得点) | |
1 | ボノ | 31 | セビージャ | 42試合(0) | ・カナダ生まれだが、モロッコの名門ウィダードで育成された |
12 | ムニル・モハメド・モハメディ | 33 | アル・ワフダ | 43試合(0) | ・ロシア大会では、仏メディアの選ぶ「ロシア大会のイケメン10人」に選ばれる |
22 | アーメド・レダ・タグナウティ | 26 | ウィダドAC | 3試合 | ・クラブでは守護神を務め、昨季はアフリカ王者に |
<DF>
6 | ロマン・サイス | 32 | ベシクタシュ | 63試合(1) | ・バックラインに安定をもたらすチームの支柱 |
2 | アシュラフ・ハキミ | 24 | PSG | 51試合(8) | ・12歳年上のスペイン人女優のヒバ・アブークと結婚しており、2人の息子がいる |
5 | ナイェフ・アゲルド | 26 | ウェストハム | 21試合(1) | ・鋭いパスでビルドアップの起点になるレフティー |
25 | ヤヒア・アティヤト・アラー | 27 | ウィダドAC | 3試合 | ・鋭いドリブルと左足から繰り出す精度の高いパスとシュートが武器 |
20 | アシュラフ・ダリ | 23 | ブレスト | 4試合 | ・対人戦に強く、機動力を活かしたカバーリング能力も高い |
3 | ヌサイル・マズラウィ | 25 | バイエルン | 12試合(2) | ・攻撃センス、テクニックは世界トップクラスだが、ハキミの壁に阻まれる |
18 | ジャワド・エル・ヤミク | 30 | バジャドリー | 11試合(2) | ・長身を生かしたダイナミックなプレーが特徴 |
24 | バドル・バヌン | 29 | カタールSC | 15試合(5) | ・足下の技術を活かしてビルドアップに貢献 ・長身なだけにセットプレーでは基準点に |
<MF>
4 | ソフィアン・アムラバト | 26 | フィオレンティーナ | 36試合 | ・中盤の底でチームを支えるコアプレーヤー |
15 | セリム・アマラー | 26 | スタンダール | 22試合(4) | ・中盤のユーティリティープレイヤー ・アタッキングサードでは決定的な仕事をする |
13 | イリアス・シャイル | 25 | QPR | 9試合(1) | ・ピッチのあらゆる場所に出没し、パワー系の選手が多いチームの攻撃に多様性をもたらす |
8 | アゼディン・ウナヒ | 22 | アンジェ | 7試合(2) | ・攻守を繋ぐボックストゥーボックス型 ・スキル全般の将来性が高い新鋭 |
26 | ヤヒア・ジャブラヌ | 31 | ウィダードAC | 4試合 | ・29歳で代表デビューしたが監督の評価は高い |
23 | ビラル・エル・ハヌス | 18 | ヘンク | 0 | ・所属クラブで卓越したパフォーマンスを披露している攻撃的MF ・史上最年少のモロッコ人選手として、ワールドカップに出場 |
14 | ザカリア・アブクラル | 22 | トゥールーズ | 12試合(2) | ・オランダ生まれで、PSGの下部組織出身のウインガー ・抜群の身体能力と両足の器用なボールコントロールで相手を振り切り、左足から鋭いシュートを突き刺す |
10 | アナス・ザルリ | 22 | バーンリー | 1試合 | ・今季初挑戦のイングランド2部で6 ゴール ・2 アシストと結果を残すMF |
<FW>
19 | ユセフ・エン・ネシリ | 25 | セビージャ | 48試合(14) | ・長身を生かしたヘディングが武器 |
16 | アブデ・エザルズリ | 20 | オサスナ | 2試合 | ・バルセロナのシャビがその才能を認めるドリブラー ・細かいタッチのスピードに乗ったドリブルでサイドを突破する |
11 | アブデルハミド・サビリ | 25 | サンプドリア | 2試合 (1) | ・ドイツ5部から這い上がったチャンスメーカー ・センスを感じさせるパスに、長距離でも高精度のシュートが武器 |
21 | ワリド・シェディラ | 24 | バーリ | 2試合 | ・ゴール前でのポストプレーやスペース作りに邁進 |
9 | アブデルラザク・ハムダラー | 31 | アル・イテハド | 17試合(6) | ・カタールリーグで1シーズンに57ゴールを記録し、サウジアラビアでは2度スーパーカップを制した経験を持つアタッカー ・得点能力の高さから、「死刑執行人」と呼ばれている |
7 | ハキム・ツィエク | 29 | チェルシー | 42試合(17) | ・チェルシーでは影を潜め、9月の親善試合でも散発的だったが、国民の期待は大きい |
17 | ソフィアン・ブファル | 29 | アンジェ | 29試合(4) | ・16年夏にクラブ史上最高額でサウサンプトンに移籍 |
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