カタールW杯に出場する全32チームを紹介
今回は、15年続いたレーブ長期政権に終止符を打ち、バイエルンで6冠を達成したハンジ・フリックを監督に据え、14年大会で優勝を経験しているベテランと成熟した中堅、成長途上の若手が融合することで、完成度の高いチームを形成し、カタールW杯での優勝を狙う、ヨーロッパ代表のグループE・「ドイツ代表」。
基本情報
出場回数 | 20回目(18大会連続) |
最高成績 | 優勝(4回) |
FIFAランキング | 11位 |
首都 | ベルリン |
人口 | 約8319万人 |
監督 | ハンジ・フリック |
愛称 | マンシャフト(チーム) |
<直近6試合の成績>
6/8 | ネーションリーグ | イングランド | △ | 1-1 | H |
6/12 | ネーションリーグ | ハンガリー | △ | 1-1 | A |
6/15 | ネーションリーグ | イタリア | 〇 | 5-2 | H |
9/24 | ネーションリーグ | ハンガリー | ● | 0-1 | H |
9/27 | ネーションリーグ | イングランド | △ | 3-3 | A |
11/17 | 親善試合 | オマーン | 〇 | 1-0 | A |
・フリック監督就任後、オランダ、イタリア、イングランドといった強豪相手にも負けることなく13試合無敗を継続。シーズン閉幕直後の厳しいコンディションで行われた6月のネーションズリーグ4試合でも、最終戦で”天敵”イタリアに5-2で勝利するなど、勝負強さを見せた。
・センターラインにはGKノイヤー、CBリュディガー、MFキミッヒ、攻撃的MFミュラーが定まることで、攻守に抜群の安定感を誇る。そこに左SBラウム、CBニコ・シュロッタ―ベック、MFムシアラといった新鋭の中堅と成長著しい若手が支える盤石の布陣だ。
・18年W杯は予選敗退、EUROではベスト16敗退と、散々な結果に終わっただけに、初戦から容赦なく挑んでくるだろう。決勝トーナメントでも目標のベスト4を目指して、手堅く保守的に試合を進め、世界にドイツの復権を印象付けさせるに違いない。
監督
(名前) | ハンジ・フリック |
(生年月日) | 1965.2.24(57) |
(国籍) | ドイツ |
(就任) | 2021.8月 |
・かつては前任のレーブ監督の副官を務め、バイエルンでは監督として6冠を達成した名将。
・人格者として知られ、選手と厚い信頼関係を築く。
・「可能な限り長い時間主導権を握り続ける」サッカーを求める。
・就任以降、バックアッパーを含む個々の選手の成長を促すことで、チーム力の向上を図り、また、19-20シーズンのCL制覇をもたらした戦術(ゲーゲンプレスによる強烈なプレス、極端に高い最終ライン、高速カウンター)を導入し、チームの軸を定めることで、上昇カーブを描くことに成功。
・6月のネーションズリーグでは3試合連続の引き分けを喫し、意地悪なファンから「ドローのハンジ」と揶揄されるが、イタリア戦(2-5)の大勝で懐疑論を吹き消す。
基本フォーメーション・戦術
迅速かつ強力なトランジションを武器に 過去の雪辱を晴らし栄光を取り戻す
<基本フォーメーション>
・後方からのビルドアップを基本にしつつ、チャンスと見れば素早く前線に縦パスを送り込み、一気に全体を高い位置に押し上げて攻撃を加速し、守備時は可能な限りゲーゲンプレスによる即時奪回を狙いつつ、的確な判断で段階的にリトリートに切り替える守備がコンセプト。
・全体のバランスを見て柔軟に対応する感性を持ち合わせているのが前政権との違い。
・基本システムは、前政権末期の【3-4-2-1】から、【4-2-3-1】に変更。
・全体的に見ると、攻守の両面ともに弱点が見当たらず、バランスの良さが際立つ。前政権末期では、ボール保持に固執しすぎて、攻守のバランスが崩壊するシーンが多発したが、フリック監督の下では、その点でより手堅く保守的であり、それがチームに安定感をもたらしている。
・不安のタネは、チャンスメイクできる選手が多い一方で、純粋なストライカーが不在な点をどう補えるか。
<攻撃時>
・GKノイヤーとCB2人にMFキミッヒが中心になり、ビルドアップを組み立てる。
・左SBのラウムがウイングのように高い位置を取ることで、「左肩上がり」の形を作り、相手の守備ラインをかいくぐって、ボールを運ぶ。その時に、CBもこなせる右SBのクロスターマンやケーラーが最終ラインに加わりバランスを取るのが基本形。
相手にパスコースを遮られたとしても、無理に繋ごうとせず、最後尾のノイヤーに預けられることが特徴。素早い縦への展開が定石だが、相手にプレスを掛けられたとしても、その真上を越えて中盤の空いたスペースにボールを配給できるので、相手は不用意に突っ込むことができない。
・相手が引き込んだ状態でも、中盤の優れた戦術眼とパス能力を持つレジスタのキミッヒと、テクニックと縦のダイナミズムを備えたゴレツカを中心に、ボール保持を確立し、相手を崩しにかかる。
技術力のあるギュンドアンやムシアラが縦にボールを運ぶ役割を担い、前方の空いたスペースに侵入することを狙ったダイナミックな展開に勢いとアクセントを加える。
オープンスペースでスピードに乗ったプレイを好むヴェルナーやザネが相手の裏を取り、ゴール前にできた空いたスペースにミュラーが飛び込み、ニャブリやハベルツとのコンビネーションで得点機会を演出する。
<守備時>
・相手にボールを奪われた場面では、即座に、前線のアタッカーを含めた11人全員が攻守の切り替えを意識して、奪われた直後から躊躇なくゲーゲンプレスを仕掛け、すぐに前へ運ばせないようにチェイシングしながら、相手陣内での即時奪回を目指すのが鉄則。
・相手がバックパスをした際は、一気にラインを押し上げてロングボールを蹴らせることで回収を狙う。
・プレスをかわされた時は、リトリートしてコンパクトな守備陣形を築き、FW陣が相手ボランチへのパスを遮る動きをしながら、サイドに相手を追い込み、いつでもプレスを仕掛けられる状態を整える。
・攻撃時はチーム全体が高い位置を取るが、最終ラインの背後のスペースはスイーパー型GKの元祖で、今なお世界トップレベルのノイヤーが管理しているため、相手に背後を取られてカウンターを喰らうことは稀。
注目選手(9人)
マヌエル・ノイアー (GK/バイエルン)
・”ドイツの壁”
・30代後半に突入してもビッグセーバーを連発。特に至近距離からのシュートには滅法強く、GKとしての基礎技術が非常に高い。
・尋常でない守備範囲の広さをほこり、「スイーパー・キーパー」が代名詞。ジョゼップ・グアルディオラ監督指揮下で、足下の技術が非常に高いことも明らかになり、バイエルンだけではなく、ドイツ代表でもビルドアップや飛び出しなど、11人目のフィールドプレイヤーとして振る舞う。
・真のリーダーシップを備え、ロッカールームでは誰もが傾聴するほど重みのある発言をする。
レロイ・サネ (FW/バイエルン)
・”爆速ウインガー”
・切れ味鋭い高速ドリブル、多彩なフェイントなど迫力満点のアタッカー。単純な競争では簡単に負けず、ボールを持った状態でもそのスピードが落ちることは決してない。
・ドリブルも脅威そのもの。ただ、速いだけでなく、狭いエリアをかいくぐるテクニックも高いレベルで備わっているので、より切れ味が増す。
・好不調の波が激しく、継続性に欠けるのが弱点。
セルジュ・ニャブリ (FW/バイエルン)
・”利巧派ウインガー”
・ウインガーとしての決定力は世界トップクラス。緩急を活かた柔軟なドリブルでゴールに迫り、両足ともに高いシュート精度を誇る。
・176㎝と身長は高くないものの、ボディバランスが非常に強い。ボールを持って仕掛けることも、裏に抜け出す動きも得意としているため、意外性のあるプレーで相手DFを惑わせる。
トーマス・ミュラー (FW/バイエルン)
・”ドイツの頭脳”
・“神出鬼没”がキーワードであり、ゴールへの道を生み出すポジショニングとダイレクトプレーは円熟の域に達している。スペースを見つける能力とセンスは他の追随を許さず、突飛な発想に基づく動作とプレーで相手守備をかく乱させる。
・独特のゴール嗅覚を持ち、パスやシュート、ドリブルのような基本技術のレベルも高い。また、勝負強さも魅力であり、大一番で決定的な仕事をこなすメンタリティも備える。
ジャマル・ムシアラ (MF/バイエルン)
・”バイエルンの中核を担う神童”
・17歳にしてドイツの絶対王者であるバイエルン・ミュンヘンでプレーし、前線のあらゆるポジションをこなせる万能型のアタッカー。
・巧みなボール捌きと、華麗な身のこなしで敵陣を切り裂く独特のドリブルが最大の武器。1対1はもちろん、数的不利な状況でも簡単に密集を突破して、1人で局面を打開してしまう。素早くフリーの味方を見つけて送り出すショートパスやミドルパスの精度も極めて高い。
・守備では、相手を待ち受ける1対1では当たり負けしがちだが、素早い切り替えから前に出てのプレッシングは強度、タイミングいずれも的確。バイエルンのように、格下相手に押し込む展開が多いチームではセントラルMFの一角も務められるが、本来のポジションは2ライン(DFとMFの間)間を主戦場とする1.5列目だろう。
ヨシュア・キミッヒ (MF/バイエルン)
・”ドイツの皇帝”
・常勝を義務付けられるバイエルンのDNAを受け継ぐ司令塔。両足のキック精度の高さを活かしたビルドアップ時の正確無比な縦パス、献身的なスプリント、的確なポジショニングなど、”背番号6(ゼクサー)”の象徴的存在。
・ゲームインテリジェンスに優れ、中盤の底から攻守をコントロール。バイエルンとドイツ代表で司令塔の役割を担う。
アントニオ・リュディガー (DF/レアル・マドリー)
・”強靭なフィジカルとエネルギッシュな闘争心を持つCB”
・高さ、強さ、速さのすべて兼ね備え、名将アンチェロッティもほれ込む実力者。190cmの長身とフィジカルで驚異的な範囲を守り、アタッカーの単独突破など言語道断。前方にスペースを与えれば、ドリブルで攻め上がり、ミドルシュートをぶち込むことも。
・この1~2年の間で格段に進化し、かつて見られた集中力を欠いたプレーは滅多にしなくなった。いまや世界トップクラスのDFと評される充実ぶりで、ビルドアップ時の正確なパスや強烈なヘディングはチームの武器。
ニコ・シュロッタ―ベック(DF/ドルトムント)
・”ドイツ期待の新鋭CB”
・現代のセンターバックに求められる要素を高水準で兼ね備える。長身を活かした空中戦の強さと対人戦の強さに加えて、キープ力や精度の高いフィードはブンデス・リーガでも1,2位を争うクオリティー。
・左足から繰り出す正確なパスと持ち上がりでビルドアップにも貢献。左SBも務められるスピードやドリブル技術も兼ね備える。
ダビド・ラウム (DF/RBライプツィヒ)
・”左サイドを切り裂くSB”
・特徴は、クロスによるチャンスメイク。左サイドを主戦場とし、FW並みのスピードとテクニックを駆使したドリブルによって相手DFを突破し、ペナルティエリアに待ち構える味方に目掛けて正確なクロスを供給する。21/22のブンデスリーガで、スプリント回数1位(1063回)を記録。
・無尽蔵のスタミナで、90分間スプリントを繰り返すことで攻守に躍動し、最後の崩しにアクセントを加える。
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