カタールW杯に出場する全32チームを紹介。
今回は、ロシアW杯では4位、昨年のEUROは準優勝と着実に結果を残し、トップクラスのタレントが顔を揃え今大会の優勝候補の一角に挙げられるも、直前のネーションリーグ6試合で1勝もできずに暗雲が漂う、ヨーロッパ代表のグループB・「イングランド代表」。
基本情報
出場回数 | 16回目(7大会連続) |
最高成績 | 優勝(1回目) |
FIFA ランキング | 5位 |
首都 | ロンドン |
人口 | 5598万人 |
監督 | ギャレス・サウスゲイト |
愛称 | スリー・ライオンズ |
<直近6試合での成績>
6/5 | UNL | ハンガリー | ● | 1-0 | A |
6/8 | UNL | ドイツ | △ | 1-1 | A |
6/12 | UNL | イタリア | △ | 0-0 | H |
6/15 | UNL | ハンガリー | ● | 0-4 | H |
9/24 | UNL | イタリア | ● | 1-0 | A |
9/27 | UNL | ドイツ | △ | 3-3 | H |
・4年前のロシアW杯での4位に続き、昨年のEUROではイタリアにPK戦で敗れて準優勝に終わったが、55年ぶりに主要大会の決勝に進出。サウスゲイト監督が就任してから6年の間に、チームは着実に成長曲線を描いてきた。
・今回のW杯・ヨーロッパ予選では10戦でわずか3失点と守備が安定し、無敗で手堅く7大会連続となる本戦出場を決めた。攻撃陣には、チームの得点源で欧州最多の12ゴールを叩き出した絶対的エースにして主将のケインを筆頭に、プレミアリーグのメガクラブで活躍するトップクラスのタレントが揃う。
・一方で、直近のネーションズリーグでは攻撃のバリエーションの欠如を露呈し、白星を挙げられないままグループ最下位で下位リーグへ降格することになってしまった。それでもW杯開幕時にケインは29歳とキャリアのピークを迎え、主力の大半は20代前半から半ばで、オーバー30はウォーカーやヘンダーソンのみと、タイミング的にはカタールW杯がビックタイミングを勝ち取る最大のチャンスだけに、満を持して56年ぶりの頂点を狙う。

サッカー イングランド代表 ホーム ユニフォーム 半袖 トップ 2022/23
【NIKE/ナイキ】
監督
名前 | ギャレス・サウスゲイト |
生年月日 | 1970.9.3(52) |
国籍 | イングランド |
就任 | 2016.9月 |
・2013年から2016年までU-21イングランド代表チームの監督を務め、2016年にイングランドA代表チームの監督に昇格した。
・18年のロシアW杯は4位、昨年のEUROでは55年ぶりの決勝に導き、主要なトーナメント決勝に進出した最初のイングランドの監督に。
・現役時代は、クリスタルパレス、アストン・ビラ、ミドルスブラと渡り歩き500試合以上に出場。A代表としては57キャップを誇る。
基本フォーメーション・戦術
超一流のタレントを変幻自在に使い分け 56年ぶりの栄光へ優勝あるのみ
<基本フォーメーション>

・中盤にはマウントやフォーデン、ライスといった伸び盛りのタレントがひしめき、前線には頼れる主将、ケインが鎮座する豪華な陣容。
・フォーメーションを固定せずに、4バックと3バックを条件に応じて使い分け、そこに豊富なタレントの中から最適な人材を起用する。フォーメーションはスタート時の立ち位置に過ぎず、どの布陣を採用しても試合中の局面に応じてシステムを変更できるのが特徴。
・最大の課題は、前線にトップクラスのFWを1人でも多くピッチに送りながら、攻守のバランスを確保して安定感のあるチームを構築すること。中盤センターに攻守のバランスを確保できる守備的MFを2人並べるという原則を守りつつも、試合によって最終ラインの枚数と前線の構成を変えることで陣形を相手に噛み合わせ、プレスの開始点やビルドアップのやり方なども調整する柔軟なチーム運用を行っている。
こうしたサウスゲイトの慎重な姿勢に対しては、”弱腰”だと批判も集まっている。しかし、攻守のバランスを崩さないという原則を第一に置き、その上で前線のクオリティーを最大限に活かそうとする点で、極めて理に適った選択だと言える。といのも、現在のチーム状況では、チームの重心を上げ、ボール支配率を高めて戦うためには、中盤と最終ラインのクオリティーが十分とは言えないからだ。
・陣容全体を見れば、最終ラインと中盤も含めて欠点らしい欠点は見当たらず、出場国の中で戦力的に最も充実したチームのひとつである事実に変わりはない。あえて弱点を探すならば、パフォーマンスに安定感を欠くピックフォードがレギュラーを務めるGKだが、重心を低めに保った最終ラインとの連携は取れており、それほど大きな不安要素でない。
<攻撃時>

・ビルドアップでカギを握るのが、右SBや3バック時のCBをこなすウォーカー。最終ラインを3枚にしてパスを回す際は、守備的MFライスが下りてくるシーンもあるが、基本的にはCB2人とウォーカーの3枚で回していく。
しかし、ボール支配を戦術のベースとする戦い方には限界があると言わざるをえない。その理由は、中盤の底から攻撃をオーガナイズする「司令塔」的なMFがいないこと。これは伝統的に縦志向の強いイングランド・サッカーは、そもそもこのタイプのMFを必要されなかったことに由来する。フィリップス、ライス、ヘンダーソンといった顔ぶれも、シンプルなパスワークでポゼッションを維持できても、攻撃のリズムをコントロールする戦術眼、局面を前に進める質の高いパスワークを持ち合わせていない。
・ポゼッションには過度に執着せず、機会があれば躊躇なく前線に縦パスを送り込んでチームを押し上げる。しかしボールのラインより前に多くの人数を送り込むことはせず、ラスト30Mの攻略にはアタッカー陣の個人能力にほぼ全て依存する。
具体的には、大きく開いたサイドからウイングとSBとMFの三角形で切り崩し、最終的には中央のケインにクロスを供給して、こぼれ球をマウントや逆サイドのウイングが狙う。
・左SBは高い位置を取り、右サイドはウイングが開いて【3-2-4-1】に変形。ウォーカーのおかげで流動的に4バックと3バックを往来できるのが強み。
<守備時>

・守備時は、3バックを敷き、最終ラインを高めに設定する。プレスの強度は敵のレベル次第。格下との試合ではFWに加えてウイングも積極的に追い込みに参加し、ボール奪取からショートカウンターを狙うが、強豪との試合ではリトリートを優先し、【4-4-2】や【4-3-3】でブロックを形成する。
・マグワイア、ストーンズ、ダイヤ―といったCB陣は、最終ラインを高く押し上げた背後のスペースをケアできるだけのスピードとアジリティーに欠けるのが弱点。
・攻撃時は、後方ではCBとセントラルMFが常に数的優位を保って中央のゾーンをプロテクトする。左SBのショーは一定の頻度で敵陣まで進出しての攻撃参加を見せるが、右のウォーカーは攻撃時にも自陣に留まり、やや内に絞ってCBペアの孤立を防ぐポジショニングを取るケースが多い。
・前線の選手もスターリング、グリーリッシュ、サカなど守備での貢献が計算できるプレーヤーが優先され、純粋な攻撃のクオリティーでは彼らを上回るサンチョ、ラッシュフォードは、安定した出場機会を得られていない。
注目選手(7人)
ハリー・ケイン (FW/トッテナム)
・”イングランドの誇る世界最強ストライカー”
・3度のプレミアリーグ得点王に輝いた、ワールドクラスの点取り屋。ボックス内外を問わず、豊富な得点パターンを持つ。左右両足から放たれる精度の高いシュートで確実に枠を捉える。強靭なフィジカルも備え、空中戦・ポストプレー・ドリブルの局面でも相手DFを翻弄するなど、超万能型のフォワードと言える。
・足元のテクニックと高いパス精度でゲームメイク役も担う。中盤に下がってパスを受ければ、味方を活かすワンタッチのパスで相手を崩す。カウンター時のスルーパスも一級品で、アシスト数だけでも一昨季14、昨季は9を記録した。
ラヒーム・スターリング (FW/チェルシー)
・”万能型スピードスター”
・圧倒的なスピードを活かした突破力が持ち味の快速ドリブラー。爆発的な加速力と細かいタッチのドリブルで狭いスペースを突破し、ボックス内に侵入すれば好機を生み出す。ペップの指導の下で決定力とポジショニングを習得し、3トップなら何処でも起用可能。ライン間でボールを受けたり、裏に抜け出す役割も担う。
・マンチェスターシティでは11のタイトル獲得に貢献し、最盛期を迎える今季はチェルシーでの新たな挑戦を選択。相手ゴールに向かう積極的な姿勢と、ハイプレス&ハイインテンシティの守備対応で攻守に渡りチームを牽引する存在だ。
フィル・フォーデン (FW/マンチェスター・C)
・”イングランドの至宝”
・171cmと小柄だが切れ味鋭いクイックネスとアジリティーを備え、左利きながら右足も自在に使いこなす高度なテクニックを武器に、サイドから中央までラスト30mのあらゆるゾーンで違いを作り出す。1対1の突破力にも優れているが、コンビネーションやラストパス、3人目としてのオフ・ボールの動きなど、周囲との連携で局面を打開する能力の高さが最大の武器。
・世界最高峰を争う現在のマン・Cで、他のアタッカー陣を差し置いてデ・ブルイネ、B・シウバという絶対的な主力と肩を並べる存在に成りつつあり、課題だったパフォーマンスの安定性も着実に向上している。彼ら2人と同様、ピッチにいない時にその不在を強く感じさせるキーマンの1人だ。
・フィニッシュ面でもさらに向上し、シーズン25得点をコンスタントに記録できれば、名実ともに、2000年代のメッシ&C・ロナウドの後継者の地位を確立できる逸材だ。
メイソン・マウント (MF/チェルシー)
・”気鋭のミットフィルダー”
・パス・シュート・ドリブルを高いレベルで備え、得点に直結するプレーを連発する成長著しいアタッカー。攻撃に転じれば素早くゴールに向かって動き出し、切れ味鋭いドリブルで相手の最終ラインを突破する。トップスピードのまま高速クロスを繰り出し、強烈なシュートも放つ。
・昨季はキャリア初の2桁ゴール・2桁アシストを記録し、チーム得点王に輝いた。
・豊富なスタミナで、積極的にプレッシングもこなす。90分通して攻守にハードワークを怠らない。
デクラン・ライス (MF/ウェストハム)
・”スリー・ライオンズの心臓”
・昨季プレミアリーグでパス、ボール奪取、タックル、インターセプトなどの各スタッツでトップ15入りを果たした、ワールドクラスのMF。抜群の機動力とリスク管理で広範囲のエリアをカバーしながら、対人戦でも強さを発揮しピンチの芽を摘む。
・ボール奪取力に関しては超一流。巧みかつクリーンなタックルで、カードを受けることが少ない。
・ボールを奪えば、高い足元スキルで攻撃を組み立て、正確なロングフィードもお手の物。近年は推進力も向上し、目の前にスペースがあれば自らドリブルで中央突破する様は迫力満点だ。昨季はプレミアリーグで3位のアタッキング・サードへのキャリー回数を記録した。
・フリーキックの習得にも励み、ミドルシュートは抜群の精度と威力を誇る。
ジュード・ベリンガム (MF/ドルトムント)
・”若き中盤の支配者”
・恵まれた体格に高いフィジカル能力と際立ったテクニックを持ち、プレーの質・量ともにチームに大きな貢献を果たせるタレント。このまま順調に成長すれば、デ・ブルイネに匹敵するワールドクラスの万能型MFになれるポテンシャルを秘めている。中盤でボールに関わる頻度が高く、攻守の両局面での貢献度は大きい。
・ボールコントロールや長短のパスワーク、ドリブル突破と前線への持ち上がり、さらにはアシスト能力、パフォーマンスの安定度も兼備し、MFとして完成度は驚くべきレベル。
・個としての絶対的なクオリティーが高く、戦術的な柔軟性も備えているので、どんなタイプのチームにもすぐに適応できる万能性が魅力。
ニック・ポープ (GK/ニューカッスル)
・”アマチュアから守護神へ”
・191㎝の長身と長い手足を活かしてスーパーセーブを連発する遅咲きGK。正確なポジショニングと素早い動き出しで、空中戦にも強い。GKとしての能力値はプレミアリーグでもトップクラスだ。
・足元に難があり、ビルドアップでの貢献度は低い。9月のドイツ戦でもパス処理で危ない場面が何度も見られた。
・16歳で戦力外を経験し、イングランド8部でプロデビューを果たす。その後は期限付き移籍を繰り返しながら着実にステップアップを遂げ、2016年プレミアリーグに昇格したバーンリーに完全移籍。そこから数年で守護神の座を掴み、ロシアW杯のメンバーにも選出された。
選手一覧
No. | 名前 | 年齢 | 所属チーム | 代表成績(得点) | |
1 | ジョーダン・ピックフォード | 28 | エバートン | 45試合 | ・流れに乗るとビックセーブを連発するが、時に致命的なミスを犯すなど安定感が課題 ・EUROでは5戦連続完封 |
23 | アーロン・ラムズデール | 24 | アーセナル | 3試合 | ・ビックセーブでチームを救い、正確な縦パスやロングフィードで攻撃の組み立てにも貢献 ・最後尾から大声でチームを鼓舞 |
13 | ニック・ポープ | 30 | ニューキャッスル | 8試合 | ・生計を立てるために牛乳配達をする時期も |
2 | カイル・ウォーカー | 32 | マンチェスター・C | 68試合 | ・1対1の強さ、スプリン能力、スピードに関しては世界トップクラスで、相手のカウンターを単独で阻止する ・今季は偽SBにも挑戦 |
5 | ジョン・ストーンズ | 28 | マンチェスター・C | 58試合(3) | ・足元の技術が高く、優れた展開力を活かしてビルドアップにも貢献 ・欠点はケガの多さ |
15 | エリック・ダイヤ― | 28 | トッテナム | 42試合(3) | ・9月のネーションリーグで約1年半ぶりに招集され、2試合ともにスタメン ・昨季にコンテの信頼を勝ち取り、最終ラインを統率 |
6 | ハリー・マグワイア | 29 | マンチェスター・U | 46試合(7) | ・マンチェスター・Uの主将も、低迷した昨季シーズンの戦犯に挙げられブーイングが常態化 ・A代表ではサウスゲート監督の信頼が厚く、9月のネーションリーグでは2試合ともにスタメン |
3 | ルーク・ショー | 27 | マンチェスター・U | 21試合(2) | ・クラブではスタメンの座を追われる ・攻撃性能が高く対人戦にも強いが、プレスやキャッチアップのスピードに難あり |
21 | ベン・ホワイト | 25 | アーセナル | 4試合 | ・アーセナル史上最高額のDFで対人戦に強く、総合力の高いCB ・高い足元の技術と推進力のあるドリブルを活かて、開幕から右SBを務めている |
18 | トレント・アレクサンダー・アーノルド | 24 | リバプール | 17試合(1) | ・黄金の右足から繰り出される、高精度のピンポイントクロスとFKが武器 ・ネガティブトランジションや1対1の守備に改善の余地あり |
16 | コナー・コーディー | 29 | エバートン | 10試合(1) | ・3バックでは攻撃の起点となるロングパスの名手 ・ウルブスでは主将を務め、「ピッチ上の監督」と評されるリーダーシップも魅力 |
12 | キーラン・トリッピアー | 32 | ニューキャッスル | 37試合(1) | ・FKのクオリティーは世界トップクラス ・右SBが本職ながら左SBとしてもプレーでき、アトレティコで鍛えられた守備力が光る |
8 | ジョーダン・ヘンダーソン | 32 | リバプール | 69試合(2) | ・あふれ出るキャプテンシーでチームを引っ張るレッズの主将 ・ピッチ内外で献身的に振舞い、オフには大英帝国勲章を受章 |
4 | デクラン・ライス | 23 | ウェストハム | 32試合(2) | ・次期イングランド代表の主将候補 |
19 | メイソン・マウント | 23 | チェルシー | 31試合(4) | ・昨季はクラブ内で得点王 |
26 | コナー・ギャラガー | 22 | チェルシー | 4試合 | ・強度の高いプレーを得意とするボックス・トゥー・ボックス型 ・昨季にクリスタルパレスでブレイクを遂げ、憧れはランパード |
22 | ジュード・ベリンガム | 19 | ドルトムント | 15試合 | ・勝利への渇望が強く、リーダーとしての資質も十分 |
7 | ジャック・グリーリッシュ | 27 | マンチェスター・C | 23試合(1) | ・昨季は1億ポンドの真価を証明できず ・相手の逆を突くドリブルで1対1を攻略し、チャンスを演出 |
17 | ブカヨ・サカ | 21 | アーセナル | 18試合(4) | ・アーセナルの象徴 ・昨季は全試合に出場し、5大リーグの21歳以下で最多ゴール関与数である11ゴール・7アシストを記録 |
14 | カルビン・フィリップス | 26 | マンチェスター・C | 23試合 | ・ロングフィードや強度の高い1対1で攻守に貢献 ・EURO2020ではプレス回数1位、走行距離2位を記録 |
10 | ラヒーム・スターリング | 27 | チェルシー | 77試合(19) | ・EURO2020では大会最多のドリブル成功数を記録 |
9 | ハリー・ケイン | 29 | トッテナム | 73試合(50) | ・絶対的エースで、キャプテンも務める |
20 | フィル・フォーデン | 22 | マンチェスター・C | 16試合(2) | ・趣味は「釣り」 |
11 | マーカス・ラッシュフォード | 25 | マンチェスター・U | 46試合(12) | ・スピードとキレのあるドリブルで敵陣を切り裂き、破壊力抜群のシュートをネットに突き刺すストライカー ・精力的にプレスも行うなど、守備での貢献度も高い |
25 | ジェームズ・マディソン | 25 | レスター | 1試合 | ・右足から放たれるラストパスやクロスでチャンスを演出する攻撃的MF ・昨季はキャリアハイを更新 ・ミドルシュートとFKは世界トップクラス |
24 | カラム・ウィルソン | 30 | ニューキャッスル | 4試合(1) | ・スピードを活かした裏抜けや肉弾戦、攻撃の組み立てにも絡める万能型FW ・ケガに苦しむが、フィニッシュワークは一級品 |
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